皆様、はじめまして。
富山県黒部市で風景写真を楽しんでおります、北崎と申します。
このたび、中川会長からお声がけをいただき、コラムを担当させていただくことになりました。
実は先日、富山市科学博物館で開催されていた「日本星景写真協会写真展 星の風景2025」で、素晴らしい作品を拝見し、「いつか自分もこんな写真を撮ってみたい」と憧れていたところに、まさかの執筆依頼。戸惑いつつも、せっかくの機会と捉え、筆を執らせていただきます。
ご依頼のきっかけは、5月1日〜15日に地元のカフェ・ギャラリーで開催した写真仲間との二人展「夜遊び〜おらがふるさと~」に、以前職場の先輩だった中川会長がご来場くださったことでした。今回はその写真展と、夜の風景に惹かれる理由についてご紹介させていただきます。
夜の写真に惹かれて
私は地元・黒部市を中心に、風景写真を撮影しています。写真は学生時代からの趣味の一つでしたが、本格的に取り組むようになったのは、家族写真がきっかけでした。
子どもの成長とともに家族写真を撮る機会が減り、次第に風景を中心に撮影するように。そんな折、地元NPO「くろべ街づくり協議会」の『おらがふるさと写真ワークショップ』にお誘いいただき、改めて黒部市の自然の美しさや魅力に気づくことができました。
このワークショップでは、黒部市の豊かな風景を多くの人に伝えることを目的に開催する『おらがふるさと写真展』を通じて地域の魅力を発信しています。何気ない日常の風景の中に、ふとした瞬間に光る“宝物”のような一瞬があることを教わりました。
そうした中で、次第に夜の風景に惹かれるようになりました。
都市のきらびやかな夜景とは異なり、星や月が照らす、静かな田舎の夜。はじめは手探りで、書籍や動画を参考にしながら撮影を繰り返す日々。幸い、車で15分も走れば撮影地に行ける環境にあり、アクセスのしやすさも黒部市の魅力です。
ただ、『おらがふるさと写真展』では夜の写真の展示が少ないため、これまで撮りためた夜の風景を中心に、写真仲間と二人展を開催することにしました。タイトルは「夜遊び~おらがふるさと~」。夜の撮影を楽しむ気持ちをそのまま込めました。
なぜ夜を撮るのか
夜にしか出会えない風景があります。
星、月、ホタル、そして日中とは全く異なる表情を見せる山や川、海の姿。
日が暮れ、喧騒が静けさに変わっていく時間。星がまたたき、月明かりに照らされた自然に身を置くと、遥か昔からこの地に暮らしてきた人々と、同じ風景を見ているような感覚になります。そして、ふるさとへの想いが静かに満ちてくるのです。
時にはその美しさに見とれ、シャッターを切ることを忘れてしまうほど。
……とはいえ、実際は夜の方が撮影時間を確保しやすい、という現実的な理由もあるのですが。
さて、今回の写真展のうち、拙作の一部をご紹介させていただきます。
<オーロラが見えた!>
黒部川河口で捉えた低緯度オーロラ。
数日前から活発だった太陽活動の影響で、佐渡ヶ島で観測の報も。半信半疑で出かけた夜、肉眼ではぼんやりとしか見えなかったその光が、カメラを通すとくっきりと浮かび上がった。
<海静眠山(かいせいみんざん)>
冬の晴れた夜、黒部市生地海岸から望む立山連峰。
月明かりに照らされ、海も山も静かに眠る。
澄んだ空気と長時間露光が描いた、夜の静寂の風景。
<幻想月夜>
黒部川堤防の松林に浮かぶ朧月。
狙っていたわけでもなく、ふと出会った一瞬の景色。
こうした偶然との出会いが、風景写真の醍醐味。
<ほうき星>
富山湾の夜空に輝いた、紫金山・アトラス彗星。
肉眼でも見えるという珍しい機会に、「くろべ牧場まきばの風」には多くの人が集まり、にぎやかな夜となった。
静寂とざわめきが混ざり合った、不思議な時間。
<宇宙につながる扉>
黒部ファーストペンギンプロジェクトの「ひまわり畑」にて。
どこでもドアの向こうに広がる天の川、そして流星。
街の光に負けず、空は確かに宇宙へと続いていた。
最後に
夜の撮影をするようになってから、空に軌跡を残す人工衛星や、眩しく照らすLED街灯など、人の手による光にも目が留まるようになりました。
それらは、私たちの暮らしを支える便利さの象徴でありながら、静かな夜の景色にはどこか不釣り合いに感じることもあります。
けれど、そうした光もまた、いまこの時代に生きるふるさとの姿。
その現実を受け止め、写真に記録していくことも、私にできる表現のひとつなのかもしれません。
この風景に目を向けた誰かが、自分の暮らす世界について少しだけ考えてくれたなら。
そんな願いを胸に、これからも静かな夜の中へと、カメラを持って「夜遊び」に出かけたいと思います。
・プロフィール
著者:北崎 徹(きたさきとおる)
富山県黒部市在住
所属(おらがふるさとワークショップ)
写真、アマチュア演劇、地域活動にエネルギーを注ぐ50代。
日々の活動記録用Facebook https://www.facebook.com/tooru.kitasaki/