2025年11月号「もう一度、走り出そう」

気がつくと星景写真歴は今年で15年になり、写真歴は20年になった。つい最近までカメラ初心者と思っていた自分が、もうそんなに経ったのかと感慨深い。残念ながら現在はほぼ活動停止状態だが、以前は暇さえあれば星景写真を撮りに出かけ、星空の下で至福の時間を過ごしていた。これ程夢中になれたものは他には無く、自分の体が動かなくなるまで星空を撮影し続けるのだろうと思っていた。しかし、そんな私も数年前に結婚し子供が生まれると、子育てと星景撮影は両立できないという壁に直面することになる。

「色々落ち着いたら、また星空を撮りに行けるさ。」

そんな希望を持っていたけれど「独身時代のように車中泊をしながら旅に出ることは可能なのだろうか?」また「一度写真から離れると以前のような情熱を取り戻すことは、思ったよりも難しいのではないか?」と疑問に思うようになった。

そんな気持ちで昔撮影した星景写真をスマートフォンで眺めていると「きっとこの風景はあの夜が最後だったかもしれない。」と思うことがある。
私が撮影者だった頃、当然ながらこの日が最後だと知るすべは無く「季節が巡ったら再訪しよう。」「星空は逃げない。来年も必ず。」と願っていた。
しかし、人生の節目を迎えるとその願いを叶えるのは意外と難しいことなのかもしれない。自由に行動できる時間は思っていたよりも短く、振り返ればあの日が最後だったと後になって気づく。

一方、そんなことを考えているとまた違った形で「もう一度、走り出そう」と前向きな気持ちも芽生える。
「かつて自分が訪れた場所に息子を連れて、同じ星空を見上げたい。」
「流星群の夜は一緒に星空を眺めたい。」
自分と同じ趣味を持って欲しいとは言わないけど、たまには星を見ることに付き合ってくれたら嬉しい。そんな日を夢見て星空への情熱は絶やさないようにしたい。

埃を被ったジッツオは手放さなくていい。
きっとまた、その日がくるのだから。

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       タイトル【ぬくもり】

プロフィール
著者:木村洋介
宮城県在住 『月光写真』や『星景写真』をテーマに活動
ブログ【遥かなる月光の旅】https://bgrace.exblog.jp/

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