2021年1月号「個展の思い出」

新年あけましておめでとうございます。
旧年は皆さまにとって生まれてこの方経験したことがない一年となったと思います。新型コロナウイルス感染症の一日も早い収束と皆さま方のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。

さて2021年最初のコラムは私、古勝が担当者となりました。しかしながら近年の家庭環境の変化もあり撮影活動が休眠状態であるため新鮮なネタがございません…。悩んだ挙句2010年に開催した初個展「星空の憧憬」について開催について書かせていただきます。

1.個展開催までの経緯
私は小学生のころから星に興味を持ち、天体観測を趣味としてきました。1989年から星写真を撮り始めましたがいわゆる望遠鏡や赤道儀を使用した星野写真(風景がない星空写真)がメインでした。1999年頃から星のある風景写真を撮り始め、2003,4年から星写真のメインが星野写真から星景写真となりました。
そのタイミングで始めた登山や、オーストラリア撮影ツアーで積極的な撮影活動期に入り、天文雑誌で多数の作品を採用していただいた時期でもありました(今となっては懐かしいですが…)。その頃、撮影の遠征地でよく一緒になったメンバーであり、ASPJに入るきっかけとなった武井伸吾氏や安田幸弘氏が星景写真の個展を行ったことに刺激をうけて勢い余って2010年1月に個展「星空の憧憬」を開催するに至りました。
        星景写真を撮り始めたころの作品「夏の予感」

2.個展の会場のこと
個展の会場となったのは地下鉄日比谷駅近くの「FUJIFILM フォトエントランス日比谷」。2006年10月~2010年3月と4年弱の間しか開設されなかったフォトギャラリーでした。うろ覚えですがこの地はミッドタウン日比谷として再開発される場所であったため富士フイルムが格安?で間借りしたところだったらしいです。
◆銀座経済新聞記事より
https://ginza.keizai.biz/headline/164/
この会場は先ほど名前が挙がった安田さんが2009年3月に、武井さんが2009年10月に個展を開催した場所でした。ここ以外も調査しましたがこのフォトギャラリーは会場に関係者が毎日いなくてもスタッフの方が対応してくれる(ギャラリーによってはだれか在廊していなければならない)ことや身近な方が個展を開いたことで早々にこの場所に決めました。審査はありましたが「こんな写真を撮ってます」的な資料を見せただけでしたので結構ゆるかった気がします。
会場は入場無料、使用料は2週間の開催期間で20万円でした。
日比谷公園のそば、JR有楽町駅近くの素敵な立地条件の会場でしたがなぜかわかりにくく会場に来るのに迷子になった方が多々おりましたが…。

3.展示作品について
展示作品はフィルムからデジタルへの過渡期だった時代でしたのでフィルムの良いところとデジタルならではの作品などを考慮した作品を展示しました。天文雑誌に入選したものを中心に、当時よく撮っていたスナップ星景やひまわり星人星景など…自分の特徴が出ている作品をチョイスしました。
作品は半切サイズが32枚、企画ものとして4枚を組写真にした半切サイズと全紙サイズがそれぞれ1枚、6枚を組み写真とした全紙サイズが2枚、合計50枚の写真(額縁36枚)。
写真のプリントはカラー写真をすべてクリスタルプリント、モノクロ写真は富士フイルムのアルジェントプリントのマット仕上げ。フィルムのプリントはそのまま発注すると意のままにならないため細かい注文を添えて依頼します。その依頼内容に答えてくれるべき業者が当時ありましたのでそこに依頼しました。
プリントの総額はお試しプリントや失敗したプリント、プリントまでしたが最終的に没になったものを含めて20万円弱でした。
         フィルムのプリントの指定指示詳細

4.額装について
作品として展示するにはプリントを裏打ちし、そして見栄えの良い額装が必要です(今なら色々な手法がありますが)。これについては前任者に倣いフォトエントランス日比谷が提携している(有)イマジン・アートプラニングで行いました。プリントの裏打ち、レンタル額縁等でこちらもおおむね20万円程だったと思います。
                 額装の一例

5.展示方法について
会場のレイアウトは事前にいただいていた(というか何度も通っていたのですでに熟知していた)ので展示する作品をどういう配置にするのかと、展示の仕方を考えました。人それぞれですが私の場合は作品ごとにタイトルと撮影地のキャプションをつけました。
                 レイアウト検討資料

                 実際の展示風景

6.写真展の告知、宣伝について
宣伝用のポストカードを作ればフォトエントランス日比谷の方で近郊に宣伝していただけるとのことであらかじめ準備しました。宣伝用のポストカードは新境地を開いた作品「星降るフィールド」を選定しました。また自分でも宣伝するために自分のブログ、SNS(当時はmixiのみ)で告知はもちろんのことASPJのホームページ上で宣伝していただきました。また種々の写真雑誌に写真展開催のお知らせを送付したことで星ナビ、天文ガイド、風景写真、カメラマン等の誌面、アストロアーツとCAPAのウェブ上で大々的(?)に告知させていただくことができました。
◆アストロアーツでの写真展開催の告知
https://www.astroarts.co.jp/news/2010/01/08furukatsu-exhibition/index-j.shtml

7.販売作品(ポストカード)について
会場のポストカードを販売することが可能でしたので本格的なポストカードを作成しました。印刷業者に依頼して12点を各250枚ほど作成。かかった費用は宣伝用ポストカード500枚と合わせるとおおむね10万円程でした。またポストカードを印刷業者に依頼するにあたりRGB→CMYK変換処理が必要だったためこの時にPhotoshopを購入(10万円)、これを含めると20万円程の出費となりました。
   販売用のポストカード。単品販売とセット販売、また企画もの1点、色物2点

8.来場者について
写真展期間は1月21日(木)~2月2日(火)、水曜日が定休日でしたので開催は12日間、会場に顔を出したのは9日間。来場者は圧倒的にASPJのメンバーや星関係でつながりがある方、SNSでの仲間うち、学生時代のサークル仲間、会社関係、身内関係が多かったですがフォトエントランスに通っている方々や告知、宣伝を見てきていただいた皆様もいました。その中でも私が星景写真を始めるきっかけとなった天文ガイドの読者の写真等で活躍されている神長智治さんや、当時はまだ星景写真家というよりもイラストレーターのイメージが強かったKAGAYAさんなど今思えばレアな方にもお会いでき、そしてお話しできたのは今になってはプライスレス(?)の思い出となりました。
                  来場者風景

9.その後
このフォトエントランス日比谷での個展の後に、ご縁があって2010年7月にsoba みのりで、2011年1~4月に倉敷科学センターで、2012年11~12月に喫茶平均律で星景写真展「星空の憧憬」を開催させていただきました。

◆Sobaみのりブログより
http://sobaminori.blog.fc2.com/blog-entry-164.html

◆倉敷科学センター告知より
https://kurakagaku.jp/release/110115_ksc_release.html

◆喫茶平均律ブログより
http://heikinritsu.dreamlog.jp/archives/5124149.html

10.あとがき
今の時代、写真はSNSなどネット上での発表が当たり前となり、撮った写真をプリントしそして額装して発表することは稀となりました。ましてやフィルム時代のように一枚一枚大切に撮るのではなく撮れるだけ撮って後で後で処理…というスタンスに代わっております。
しかしながら写真は撮ったままではなく現像、編集、そしてプリントすることで自分の思いを明確に表現できるものです。個展を開いたことで今まで溜めてきた星景写真に対する思いや考えを解き放つことができ、そして新たな気持ちで作品作りに踏み出すことができるよい機会となりました。
さすがに個展はハードルが高いですが仲間うちでの写真展等で作品をプリントすることで自分を表現し、また生の感想を聞くことでさらなる飛躍ができると思いますので是非とも皆様もチャレンジをしてみてはいかがでしょうか?

著者:古勝数彦(ふるかつ かずひこ)
八王子市在住 日本星景写真協会理事
1999年頃から星景写真を撮り始める
近年はカメラ投げ撮影方法のみならず、
なんでも飛ばす撮影に力を入れている