2016年3月号「体感!星景写真 -カノープスを追って-」

地球上から眺める星空。山であったり海辺であったり見上げる場所の違いで見える星空が変わり、また季節や時間によっても星空の様相が替わっている。北陸に住んでいると、南側には山があって南天がどのくらい見えるかが結構気になるところである。特にカノープス(りゅうこつ座α星、ある地域では南極老人星されひとめ見ると長生きするとか(見た時間分?))は、あこがれの星で各地でこの星を長年追っている。低空に見えるカノープスとまっさきに思い浮かぶシーンが富士山とのコラボだ。

30数年前の大学時代。地図を広げ方位と標高差を確認し電卓で高度を計算して奥秩父の国師ヶ岳を選んだ。バイトを終え22時に下宿をでて登山口までバイクで3時間。そこから小一時間で山頂に着くと予想通りカノープスは富士山の上を動いていった。

car1984

1984年11月

現地では35mm判ネガフィルム2台で撮影

国師ヶ岳からの富士山は真南ではなかったため、より良い撮影地を再計算するとともに登山の経験を重ね数年後には甲武信ヶ岳から均整が整った様子を捕らえることができた。

pentax67 90mm PKL200 90min

1988年12月

上弦過ぎの月明かりが斜光の日時を選定。67カメラ2台を向ける

近年 星景写真でもデジタルへの依存度が高まる中、デジタルでの優位性は動画化にあると2009年頃から連写による撮影が増えてきた。今までも1コマの長時間露光の中で星の動きや月明かりの情景を捕らえていたものを1シーンの動画として撮影している。撮影を始めればカメラに触れることができないので博打的撮影は基本的には変わっていない。フィルムでの長時間露光との違いは、シーンに応じて赤道儀などでのパンやドリーで動かすことであろうか。動画としてカノープスと富士山をテーマとした場合、カノープスはより山頂に近く通過した方がおもしろいものとなる。

2014秋期に再度富士山を眺められる場所を調べてみた。

時代はPCが普通となって任意の場所からの眺望や星の動きも知ることができる。地図や衛星画像など主なところはフリーで見ることもできる。そうした予習のうえ選定した現地へ向かい夜道を歩き出す。夜間の山を歩くことは経験があるから許されるわけだが登山には危険に対応できるように常時気をつけていないといけない。月あかりのなかたどり着いた場所は、想像していたよりも広く星空は格別であった。シミュレーションどおり撮影を始めると、カノープスが富士山の頂上を通過していく!大気差の浮き上がりも見こした上で(たぶん)大丈夫と思っていても実際に双眼鏡で山頂の間際を瞬いているのを見ていると感動的である。

約40分の連続撮影スタート(カメラも右方向にパン)

car2014a 3

カノープスが富士山頂に位置する時、画角の中央になるよう設定

car2014b

約1100コマの撮影終了

car2014c

※300mm右パンのシーンから選出

2014-200 (2)

※300mm固定から山頂通過時の200コマを試しに合成

2014年11月

現地ではデジイチ3台:300mm右パン・300mm固定・135mm固定

自分にとっての星景写真とは

初めての場所には地図などであらかじめ地形を把握し、現地では風の音、動物の声、冷たい空気に触れながらあるく。自分の五感をフルに感じながら星を眺めて地球の上にいることを実感できる。写真そのものより撮影に行くことが目的となってずっと続けているのです。

著者:中川達夫(なかがわたつお)

own

2009写真集「星稜剱岳」 2010コニカミノルタプラザ個展 2012 Blu-ray「星空絶景」ほか共著多数
長年続けていると以前○○であったのが、久々に再訪すると激変して唖然とすることが増えてきました。見上げる星空は、変わっていないことにホットしています。

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