私には、星景写真を始めた頃からの撮影テーマがあります。それは、富士山です。富士山に憧れて、星空のある星空の写真を撮りたいと思い、通いつめて試行錯誤を重ねていろいろと撮影していきました。同じ場所で撮影しても、その時の情景や条件等によっていろいろと表情を変えてくれる魅力的な被写体です。同じ撮影場所(山中湖)からの富士山の夜の表情をご紹介します。撮影したとにの空や月の状態によりバックの色合いも自在にコントロールすることができます。
(1)街明かりで撮る
富士五湖周辺は都心に比べると空はかなり暗いですが、長時間露光すると街明りを反射して富士山が浮かびあがります。特に山頂に雪がある冬の季節は、街明りで富士山は写りやすくなります。空の色合いは、使用するフォルムの種類や撮影時のホワイトバランスの設定(デジタルの場合)により意図的に変えることが出来ます。
(2)月明かりで撮る
月明かりが明るい分、月のない夜に比べると星の数はかなり減ってしまいます。しかし、月明かりに照らされた富士山の幻想的な姿を写すことができます。月明かりは、太陽の光が月に反射してくる光で地上を照らしていますから、長時間撮影することにより空は青く写ります。
(3)前景を入れて撮る
富士山自体。大変魅力的な被写体ですが、前景にモチーフを入れることにより少し違った表情に写すこともできます。低く傾きかけた月を入れることにより月の明かりでボートを浮かび上がらせました。空の色は、中間色的な色合いで、月の周辺からのグラデーションをきれいな色合いで表現することが出来ます。
(4)薄明の光で撮る
先程の写真を撮影した直後に、沈みかけの月を入れて撮影しました。また、露出の最後を薄明にかけて撮影したため、空の色合いに変化を入れ、紫がかったきれいな色合いを写すことが出来ます。
こちらの写真は、夕方の薄明の残る星の数が増えた時間帯から露光を開始して、薄明中ならではのグラデーションのきれいな色合いを写すことが出来ます。
(5)季節感を撮る
前景に凍った湖の一部を取り入れ、厳冬期の表情をプラスして撮影してあります。季節感を表現しやすいものを取り入れて、富士山をより魅力的に表現することが出来ます。
(6)時間を切り取る
フィルム時代には撮れなかった写真です。デジタルならではの高感度特性・速写性により露出時間を切り詰めて、この様な写真も撮ることが出来る様になりました。
富士山は、見る方向により、また、季節や気象条件等により表情をいろいろと変化させてくれます。富士山に限らず、魅力的な被写体は周りにいろいろとあります。皆さんも自分なりのテーマを見つけて、そのテーマを追い続けてみてはいかがでしょうか?
著書:安田幸弘(やすだ ゆきひろ)
埼玉県在住 日本星景写真協会理事