2017年7月号「いつも星空は雲の向こうに」

断捨離、ミニマリスト、終活・・・昨今、流行りのワードですが、私も流行に乗っておこうと持ち物を片付け始めました。
そんなある日、幼少からのアルバム整理をしている途中で、ある事に気が付いてしまったのです。
遠足、修学旅行などイベント時には雨合羽を着ているし、友人や家族との旅行の写真も傘を差していたり、日差しを感じないものばかり。
ふと思い出すと人生における重大な節目である、結婚式も雨、新婚旅行で行ったハワイの写真も曇天ばかり、娘の出産時は激しい雷雨で家族の到着が遅れたほど。

ここ数年、私が最も情熱を注いでいる星景写真撮影での一番の悩みは、もしかしたら生まれ持っての運命・・いや雲命なのでしょうか。

星景写真を撮るために必要なものは、星座や天体の知識、風景と合わせるセンス、ロケハンの努力、用途に合わせた機材など上げればキリがありませんが、最も大切なことは、晴天に恵まれることではないでしょうか。

こちらの星景写真協会の皆さんはいわゆる『晴れ男』『晴れ女』が多くいらっしゃるように見受けられます。

それなのに、私はというと、ほぼ毎週のように星空を求めて、登山や車中泊遠征をしているにもかかわらず、曇天に阻まれ、星空に会えるチャンスがとても少ないのです。

きちんと天気予報を調べて出掛けているはずなのですが・・・。
例えば、燕岳登山1勝6敗、立山室堂1勝5敗、双六岳、蝶が岳、尾瀬その他0勝・・・挙げればきりがありません。

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辛い登山をしたのに、結局一晩中、曇りや雨で機材がトレーニングのウェイト替わりにしかならなかったこと数知れ ず。

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もっとも心折れたイエローナイフツアー。オーロラ鑑賞確率95 %のはずが0%で帰国。

あまりの晴天運の悪さから、ひどく落ち込むことがありますが、それでも決して、星空を追い求めることを止めようと思ったことはありません。

それは満天の星空に出会えた時に、それまでの虚しさ、悲しみ一気に吹き飛ばす感動があるからなのです。
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photo5特に誰もいない山頂でただ一人星空に包まれたときの快感はとても言葉に言い表せません。

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苦労のすえの満天の星空。こんな時は美しい月夜に涙を流しながら産卵するウミガメの如く、
涙を流しながらレリーズケーブルを握りしめるのです。
これからも、たとえ曇天が10回続いたとしても、11回目に はきっと大丈夫!
と自分に言い聞かせて夜空のもとへ飛び出していくことでしょう。
雲の上にはかならず星空があるのですから。

著者:今井多佳子
埼玉県在住 日本星景写真協会 準会員
撮影スタイルは登山&車中泊遠征
     ねことひかりものⅵ