2022年8月号「2022年上半期を振り返って」

みなさん、こんにちは。会友の北山輝泰と申します。このたび、渡部剛さんよりバトンを受け取りましたので、久しぶりにコラムを書かせていただきます。

その前に、はじめましての方も多くいらっしゃるかと思いますので、簡単に自己紹介をさせていただきます。私は現在、星景写真家兼ライターとして活動をしております。以前は望遠鏡メーカーに勤務していたのですが、5年前に独立をし、今は富士山が見える某県に根城を構えつつ、あちらこちらに移動をしながら、撮影や星景写真のノウハウを教える授業を行なっております。執筆業ですが、紙面では天文雑誌「星ナビ」や「デジタルカメラマガジン」、ウェブではカメラのキタムラ運営の「ShaSha」や「スタジオグラフィックス on the WEB」などに記事を寄稿しています。お時間ありましたらぜひ検索していただけると嬉しいです。

さて今回のコラムの内容ですが、2022年も折り返し地点を超えたということで、私が撮影した写真をお見せしながら、上半期で特に印象的だった光景についてご紹介したいと思います。

元日の薄明の空に集う星々

まずはじめは、1月1日元日の朝の出来事です。日の出を迎える前の南東の空に、さそり座のアンタレス、火星、月齢27.5の月が揃う印象的な光景がありました。アンタレスはギリシャ語の「アンチ・アレス(火星に抗うもの)」という言葉が由来となっていますが、この日の星の並びは、まさに火星とアンタレスが拮抗する姿そのものでした。さらに、その争いを治めるかのように、月の女神アルテミスが火星のすぐそばにいるのもまた一興です。ちなみに、次回は2030年の元日に木星と月齢26.2の競演を見ることができます。

ビーナスベルトと地球影

続いては、1月の満月の日に撮影したビーナスベルトです。ビーナスベルトとは、日の出前や、日没後のわずかな時間に見られる大気現象で、太陽がある方向とは逆方向にできる薄いピンク色の帯のことです。これは毎日見られるものではなく、空気が澄んでいて快晴の空という条件が揃う冬の時期が観察しやすいと言われています(もちろん条件が整えばそれ以外の季節でも見ることができます)。ビーナスベルト自体は過去何度か撮影したことはあるのですが、満月の出と一緒に撮ることができたのは今年初めてで、思い出の一枚となりました。

昇る天の川と金星、火星

例年2月上旬からは、昇る夏の天の川撮影を楽しむことができますが、今年は天の川の近くに金星と火星がいる賑やかな光景を見ることができました。一際明る輝く金星に対し、火星はどこか大人しく、同じ惑星でもここまで明るさの違いがあるのかと改めて実感することができました。その中でも印象的だったのが、2月28日の夜明けです。この日は、金星と火星以外に月齢26.6の月も加わり、さらに金星と縦に直線的に並ぶ珍しい位置関係で、数多く撮影した昇る天の川の中でも、印象深い写真を撮ることができました。

朝方の惑星大集合

今年の上半期のフィナーレを飾るにふさわしいのが、4月から6月末まで見ることができた惑星大集合でしょう。2020年の木星と土星の大接近も胸が熱くなる天文現象でしたが、私にとってはそれと同じくらい感動する出来事でした。4月から全国各所で撮影を行なっていましたが、特に6月末は地球を含む全惑星を同一画角に収められるとあって、早くからこの日が来るのを待ちわびていました。私が住む関東は本来梅雨の真っ只中ですので、ある程度の移動は覚悟していましたが、結果家からさほど遠くないところで撮影することができたのは幸運でした。次回全惑星が集合する時、再び撮影できるかは定かではありませんが、その時を心待ちにしたいと思います。

最後に

星景写真の楽しみ方は人それぞれですが、私は星の美しい並びを見ている時が一番撮影をしていて楽しいと感じます。今年は秋以降にも夕方の空で惑星が集まる光景を見ることができますので、今からしっかり準備をし撮影に臨みたいと考えています。

著者:北山輝泰(きたやまてるやす)
所属:星景写真協会 会友
HP:https//www.kitayamateruyasu.com

星景写真教室について:https://www.facebook.com/nightphototours

8月6日(土)〜23日(火)まで、ソニーストア福岡天神にて、写真展「月と共に」を開催。 6日(土)にはスペシャルトークショーも開催します。詳しくはソニーストア福岡天神のHPをご覧ください。