2022年11月号「星空の表現を追い求めて」

石原大稔(だいとしぃ)さんの紹介で今回のコラムを書く機会を頂ました。鈴木茂春と申します。

星空の撮影は、石原大稔(だいとしぃ)さんの「カメラで天の川が撮れるよ」の一言から撮影に行くことになったのがきっかけで、すっかり魅了され早くも9年が経ちました。

私は満天の星空を見ながらの撮影に楽しく時間をかけていますが、それ以上に楽しい時間を過ごしているのが画像処理です。

元々絵を描いたりすることが好きだったこともあり撮影後の画像データがどんな表情を見せてくれるのかをワクワクしながら光で絵を描く感覚で画像処理を楽しんでいます。

画像処理をしていて思うことは、人は目に入った物から印象に残る物だけが記憶に残り余計なものは目に入っていても脳の中でフィルターかかり現実より美化されています。ですので、そんな記憶の中の星空を表現したいと思っています。また、構図も夏の天の川が中心となるものがどうしても多くなりマンネリ化しがちで悩みの種となっています。当然ですが構図を画像処理で後からどうにか出来るものではありませんから、試行錯誤を繰り返し撮影に挑んでいます。

「星空の表現」

・視点を変えて

長野県野辺山にある有名な農道の中央に立つ「山梨の木」を、視点を変えて地面すれすれに下から煽るようにすることで木が星空を見つめているさまを表現しました。

この時の空は透明度も高く無改造機のカメラでもHα領域の赤い色が淡く出てくるほどで、星の色も鮮やかな星空が撮れました。画像処理は行き過ぎないようナチュラルな方向を意識し、地表の光害被りはあえて残し色合いのアクセントにしています。

このような透明度の高い星空は未だに数えるほどしか出会えていません。

この日に出会えたことに感謝です。

作品1「樹齢250年の袂(たもと)から見上げる天の川」2015年10月12日 長野県南佐久郡南牧村


・イラストの様に

次は富士五湖の精進湖から撮影し絵画的に仕上げた作品です。

撮影時の予報は晴れの予報でしたが、風が殆どなく日中との気温差もあったようで湖面が雲海に包まれてしまう状況でした。星がちらりと見えたのは僅かに10分程度で撮れ高無しだと残念な思いで帰路に就いたのを覚えています。

ダメ元で星の見えていた時間帯のデータを確認してみましたが、予定していた富士の背に天の川が昇る時間帯は全滅で少し手前の時間帯にさそり座を含む星が僅かに見えていた物が数枚有るだけでした。

せっかくなので星の見えていた画像の処理をしたものの、星空といえる仕上がりには感じませんでした。しかし、Facebookに上げてみると予想以上に好評でこの様な表現も有りなのだと気が付かされた作品でした。

作品2「束の間の星空」2016年4月9日 山梨県精進湖


・人物を入れて物語を

こちらは、人生初めてのオーロラ撮影に挑んだ時の作品です。

オーロラ撮影の中で一つのテーマが人物を入れての撮影でした。当然モデルなんて居ませんので自撮りになりますが、これが中々大変で構図を決めピントを合わせ露出設定(オーロラは意外と明るく白飛びしないようにする加減が必要でした)を決めてから岩山によじ登り、両手を上げてポーズをとりました。ポーズを決めてから耳を澄ますもシャッターを切る音が聞こえません。そして、時間も確認できないので心の中でカウントダウン。

1分半ほど(多分)経過してから、いそいそとカメラまで戻り結果を確認してガッツポーズ!、やはり人物が入ると物語が生まれるなと実感しました。画像処理はホワイトバランスやトーンカーブを微調整し彩度は行き過ぎないように色をのせオーロラ上部の赤味を崩さないようにしています。

作品3「この星空を一生忘れない」2019年9月17日 カナダユーコン州


・薄明に前景と絡めて

さいごは今年の作品です。2022年もコロナ禍で出かけにくい状況な上に冬から夏にかけて天候も不純な日が多く撮影の機会に恵まれない年でした。そんな中で4月中旬に主要な惑星が夜明け前の東の空に均等に並ぶ様子が見られるとのことで、是非にも撮りたいとの思いで撮影計画を立てました。

撮影場所は惑星の高度が低いことから水平線の見える海辺を選択しました。また、撮影時の状況を考えると明るい惑星とは言え薄明の空に点で写るのは物足りないと考えクロスフィルター(Kenko Twinkle Star)を用意し準備万端だったのですが、当日の予報はどこの雲量予報を見ても曇り予報…行かずに後悔するより行って後悔した方が良いだろうと出撃した結果、撮影時刻には晴れ上がり大正解でした。(笑)

構図は一番明るい金星を中央付近に入れ、前景は海の中に立つ鳥居を中央に岩場に押し寄せる波で躍動感を持たせました。画像処理は全体的な露出調整と薄明の空のオレンジからブルーに変わるグラデーションの具合を損なわないように仕上げています。

作品4「惑星の集い」2022年4月17日 茨城県大洗町

「おわりに」

なにやら、撮影談義の様になってしまいましたが表現は自由で無限大、今後も固定観念は無くして取り組んでいきたいです。そして私の作品で心が動かされる、もっと言えば人生観を変えられるような作品作りが出来るよう精進していければと思っています。

著者:鈴木 茂春(すずき しげはる)
東京都足立区在住