2021年8月号「人の生活とともにある星空」

北海道札幌市在住の横山明日香と申します。
コラム執筆は2018年1月号以来の2回めとなります。
どうぞよろしくお願いいたします。

私の星景写真は、前景に人工物を積極的に取り入れて、人の生活とともにある星空という表現をめざしています。過去の作品の中からいくつか取り上げますので、紹介させてください。

こちらは馬産地として有名な、新ひだか町のサイロです。
冬の星座の下に、複数のサイロが身を寄せ合うように集まっている姿が、北海道に住んでいる私たち自身のようだと思いました。

「冬のサイロたち」2019年1月撮影

こちらは留萌(るもい)市にある灯台です。
女性の像が手に灯りを掲げているという、全国でもめずらしい形の灯台です。
灯台の灯りが強いことが予想されましたが、合成などせず1枚撮りで撮影しました。

 「銀河の記憶」2007年8月撮影

この灯台は私の分身のように思っているのですが、ご覧になられる方も、この灯台をご自分自身と思っていただけたらと思います。
これから出会う誰かを待っているような、遠くに行ってしまった人からの連絡を待っているような、そのようなイメージで撮影しました。
岬の突端で銀河からの風に吹かれながら、命の灯を掲げて、「私はここにいます」とメッセージを送っているようです。誰しも、このように思いを伝えたい、会いたい人がいるのではないでしょうか。

こちらは電線を竪琴の弦に見立てて撮影したものです。
冬の星たちが弦を鳴らして音楽を奏でているかのようです。

「雪原の竪琴」2017年1月撮影

風景写真では嫌われ者の電線ですが、あえて主役にしてみました。
北海道の農地では、写真に電線が写り込むのを嫌って農地に立ち入ってしまう方がいて、
農家の方々のご迷惑になっているという状況があるのですが、電線もきれいだなと思っていただけたらうれしいです。遠くの街灯や家々の灯りも点々と美しく輝いています。

こちらは、安平(あびら)町の菜の花畑です。
この日は夜霧が菜の花畑を包み込み、柔らかい描写となりました。

「銀河のしずく 菜の花へ」2019年6月撮影

これを撮影した前年、2018年の胆振東部地震では、震源地に近かった安平町でも大きな被害がありました。生活を再建するまでに多大なご苦労がおありだったことと思いますが、震災を乗り越えて栽培された菜の花に、農家の方々への感謝の思いで撮影したものです。
菜の花の一輪一輪が安平町の人たちであり、また、全域停電を乗り越えた北海道に住む私たち一人ひとりであるように思いました。

私の星景写真では、地上の景色はいつも自分の分身のように思っているのですが、どうしてそう思うようになったかというと、夜空の下に立ち、この宇宙の広さを思うにつけ、私はこの地球に属しているのだということを強く感じるようになったからです。

私は2004年~2008年にかけて、オーロラ撮影のためにカナダ・アラスカを4回訪れました。
レンタカーで自炊をしながら車中泊の一人旅でしたが、その際にも、大自然の中のオーロラだけでなく、人工物を取り入れ、生活感のある景色とオーロラの撮影を試みていました。

「アイスブリッジ」
カナダ・ユーコン準州・ドーソンシティにて 2008年3月撮影

「月下の船旅」
カナダ・ノースウエスト準州・イヌービクにて 2008年3月撮影

オーロラというと、どうしても「神秘・奇跡の自然現象」と表現されがちですが、このような場所にも人の生活があり、住んでいる人たちにもきっと私達とあまり変わらない日々の思いがあるのだろうと思います。そうした生活感のある景色とともにオーロラを撮影することで、オーロラに「神秘」というより親近感を持っていただけるのではないかと思いました。

そして、オーロラと並行して北海道の星景写真を撮影し、両方をご覧いただくことで、北海道もオーロラに負けないくらいステキだと、お伝えしていきたいと思っています。

また、それを撮影している私という人間がどこにでもいる平凡人だということを知っていただくことで、星空の世界やオーロラの世界にもリアリティを感じていただけるのではないかと思っています。

横山明日香(よこやまあすか)
北海道札幌市在住 日本星景写真協会 会友
http://swingby-i.com