2018年6月号「星空と共に半世紀」

星空を追って

星とともにある景色ということで最初に撮影したのは「カノープス」でした。

その作品は思いがけず、私の暮らす市の新年号の広報の表紙を飾ることになり、幾ばくかのお金を得たのでした。その後、理科の教材への写真提供などと続き、仕事として星空の出来事や観望会の企画立案などで対価を得ることになったのですが、仕事として撮影する写真と、個人としての作品づくりをそれぞれに分けて写すことをある時期からスタートさせました。先人達が「季節感」として星空を捉えていたものなのに、何時からか私達は星空を意識しなくなったのは、「空が明るくなったせいだろうか?」そんな問いかけが私の心に沸き上がり、今見える夜空の星が私たちにどのような季節感を伝えてくれているのだろうかを、写真による表現で伝え残そうと思うに至り、身近にある「星の見える景色」を撮影し始めたのでした。見たままの光景で表現することの難しさは二十歳前後で始めた「星空観望会」の中で忽ちにして現れました。星の見えない夜はプラネタリウムを使うことができない当時の環境で、子供や大人も含めた「観望会」ではフィルムで撮影した「星の写真」をスライドプロジェクターで見せたのですが、的を得た子供の発言に愕然としました。「これ星の写真じゃーない!」そう、星が線状に写る固定撮影の天体写真と称するものだったから、星は点に見えるものとは大違いだったのだ。ここから私は点として写る「星の写真」へのチャレンジを始め、増感や前処理といった技術やフィルムの選択などを使って写真に反映し、ようやく点像としての撮影に確信が持てるようになったころ、デジタル時代の波が押し寄せてきました。仕事としてこの頃オーロラのツアーを幾つもこなしていましたが、あるメーカーからデジタルカメラの供与を受けてテスト撮影をし、天の川が感度設定や撮影秒数の調整で確実に写ることに手応えを感じ、ある時期からスッパリと、フィルムの使用を止めてデジタルに移行するようになって、「星のある光景」の表現に可能性を感じ、現在に至っています。

星空を通して思うこと

私達星の撮影をする者たちは、季節を先取りすることや去り行く季節を一枚の作品に表現することで、星空の中に「季節感」を地上の風景を含めた作品にしてゆきますね、私は年に何度も行う「星空観望会」の中でよくそんな作品を使いますが、特に留意している点は「比較すること」です。昔の人達は、一つの星、星で作りあげる形、星座などで季節の到来や自分たちの生活に星空を利用し使っていましたが、今の私たちは「癒し」や「美しさ」と言った心に沁みる対象としての星を見るといった違いを意識して、講演やスライドショーの構成をしていますが、本来の星の美しさや時々起きる空の出来事の不思議さを伝えるなかで、参加した方が感じたことをお聞きして、先人達は同じ光景をどう感じ話し伝えて来てくれたことを、比較して話に織り込みます。一期一会の星の出会って感じたことを、次の世代にを伝えてほしいと話を結びます。最近観望会ではほとんど望遠鏡を使わなくなりました・・・自分の目で星空を見てそれぞれの方法で、星を楽しんで欲しいと思うからで、私はあくまでも同じ時、同じ目線で星を見ていただけるように、お手伝いが出来ればと考える今日この頃です。

最近の星空ブームについて

近年色んな撮影地に赴くと星を撮られる方が沢山増えました。当協会が一助を成したものと自負して行きたいところですが、仕事として星空に関わってきた私には、良い点と悪い点も沢山感じている昨今の状況です。本来過去からの光の贈り物のとしての星空は、今の私達に星占いの利用や、普段中々見られなくなった天の川などを見るという機会を提供したりするなど、いろんなアプローチが増えていますね、デジタルカメラの登場によって星空を写すことが手軽になった状況の中で、星を見ること写すことはそれぞれの方々の手法や考え方を尊重すべきとは思います。ただ今は指導する立場となった私は、個人としての反省も含め、夜間の撮影や星を見ることにロケハンの必要性を痛感しています。下調べをすることで危険やトラブルの回避は必須事項と考え、日々実行しています。星を見上げ、星を写す環境の保全は私たちの一人一人の行動に掛かっていると考えています。

最後にこのコラムの場を提供していただきましたこと感謝いたします。

ありがとうございました。

著者: 有賀 哲夫(あるが てつお)
長野県在住 日本星景写真協会理事
BLOG   [MY FOTOWORK]   http://fotowork.blog95.fc2.com/
Homepage  有賀写真企画事務所    http://www9.plala.or.jp/appo/index.html