2018年4月号「月を愛でてみませんか?」

夕方昇りかけの月、早朝の月、印象的です。月は景色を立体的に見せてくれるスパイスになりますが、大きすぎる月齢は星を主体にするにはうるさすぎるので、いっそのこと月を主役にしてみませんか?
月の撮影は時間がピンポイントなので、計画性がものをいいます。

■コンテ・ロケハン
地上の風景、特に山と組み合わせる場合、ロケーション決めはカシミール3Dが便利です。今回は山と組み合わせることを前提に解説します。
月のいる方位角で、概ね組み合わせる山が絞り込まれるので、ロケーションも絞り込まれてきます。そして、その景色からコンテを描いておきます。00
さて、カシミール3D上でコンテを描いても、そのロケーションで障害(民家や森林や電線など)の有無が問題になります。事前のロケハンができれば良いのですがそうそうマメに行けるものでもありません。そこで、Googleストリートビューで確認するのが便利です。一例として、2013/11に大町美麻で撮った鹿島槍と月ですが、カシミール3D上でベストな場所の道路脇に林があり、Googleストリートビューで林の隙間を見つけてそこに陣取れたパターンです。事前に確認できなければ路頭に迷うところでした。
こんな感じで位置の調整が済んだ場所はGoogleマップで位置を保存しておけば、早朝の移動でも迷うことはありません。

図 1 鹿島槍に沈む

図 2 カシミール3Dのシミュレーション

図 3 Google ストリートビュー

図 4 撮影地の様子

■撮影に適した時間
月は明るいので、地上の景色と組み合わせるときには明暗のバランスが必要です。
陽が明るいと青空に月が溶けてしまい、逆に薄明前では風景がシルエットになります。
満月の場合は経験上、日出/日没と月没/月出とが15分程度オーバーラップが明暗のバランスが良い目安なのですが、もう少し踏み込んで、撮りたい時間での太陽の仰角に注目してみましょう。
図5が横軸に撮影時間での太陽の仰角を、縦軸に月の仰角をプロットしたものです。

図 5 月の仰角と太陽の仰角のプロット

これを見てわかるとおり、月の明るさと地上の明るさのバランスが取れるのがピンポイントであることがわかります。
とりわけ、太陽の仰角が大きすぎると、月が青空に溶けてしまい、作品として不十分になってしまいます。

■撮影に適した焦点距離
見た目で、月は大きく見えがちですが撮影してみると意外と小さいもの。私のスタイルは、引きのカメラ(80-400mmズーム)に加え、500mm,1000mmあたりをよく使います。
迫力ある月を撮るならば1000mmは欲しくなります。ここまで長玉になるとミラーショックどころかシャッターぶれすら気になってきます。サイレントシャッターが使えるカメラはこんな時に便利です。
地上の景色は概ね2km以上離れていないとパンフォーカスにはなりにくいです(ピントの違いが目に付いてきます)。建物と組み合わせる場合はこのあたりも考慮した方が良いでしょう。もちろん地上風景にピントを持ってきて、月はぼかすというのもアリです。

■撮影確率を上げるために
満月は概ね月イチ。その前後入れても、チャンスは年間20回あるかどうか。更に天気が良く、地上付近に雲が無くとなると、計画しても実際撮影できるのは1割程度。ものに出来るのはほんの僅かです。たとえ晴れていたとしても月は恥ずかしがり屋なのか、なかなか良い条件で撮らせてくれません。そこで、チャンスを増やすために仰角を稼げば、月はまん丸にはならないものの、満月前後にもある程度拡大出来ます。

図 6満月前の月(月齢14.0)

図 7満月前の月(月齢12.3)

また、薄明の中の細い月も入れれば、風景はシルエットになりますが、チャンスを広げることが出来ます。

図 8薄明の中の細い月(月齢0.9)

図 9薄明の中の細い月(月齢27.6)

■お天気
定番のGPV気象予報(http://weather-gpv.info/)をよく使います。月が沈む先の雲や太陽がある方向の雲の有無を参考にします。
加えて、日本気象協会のPM2.5の予報(http://www.tenki.jp/particulate_matter/)も参考になります。山や空の焼け方、月のかすみ具合がPM2.5の濃さにより変わってきます。

■最後に
ロケハン、撮影時間と月、太陽の位置、焦点距離、お天気と説明しましたが、いずれも計画性がポイントです。星景写真を撮る場合、気がついたら何時間も撮っていた…なんてことありますが、ピンポイントの場所にピンポイントの時間で撮影するスリリングな撮影スタイルも良いものです。ぜひチャレンジしてみてください。

著者:久保田俊雄(くぼたとしお)
長野県在住
日本星景写真協会 準会員
ふと見上げた星空を留めておこうと、ふらりと撮影しています。月に照らされた景色と
星空の写真も撮っていますが、月のある風景は、描いているイメージと時間と場所との
ランデブーにいつもドキドキします。