2020年10月号「 私の渥美半島撮影事情」

少しずつ過ごしやすい季節になりましたが、みなさんいかがお過ごしでしょうか。
コラムに先立ちまして、「星景写真協会のホームページでもご紹介いただきましたが、先日前会長であり私の師匠でもある竹下育男さんと「星月夜」星景写真2人展を開催いたしました。
ふたりで8点ずつ、計16点の小さな写真展でしたが、おかげで連日盛況のうちに終了することができました。
遠方よりおいでくださったみなさん、本当にありがとうございました。

写真展準備中の私(photo by 竹下育男さん)

私は愛知県田原市在住、撮影地は自宅や職場から5分10分で行ける場所ばかりです。要するに田舎住まいということなのですが、思い立ったらすぐ撮りに行ける、それが私にとっての最大の利点です。
田原市のある渥美半島は、東北東から西南西にのび、南側は太平洋に面していて、温暖で晴天率が高いとされています。半島先端から「片浜十三里」と呼ばれる真っ直ぐな砂浜が遠州灘に沿って東へ続き、その途中に何ヶ所か巨岩が乱立する磯があります。以前から釣り人、サーファー、朝日や夕日を撮るカメラマン、ただ海を眺めに来る人たちなどで賑わってきましたが、最近では天の川を撮影に来る人がとても多くなりました。

南方向は海で街明かりがないので、透明度がいい日にはかなり低空まで星を見ることができます。でもそれ以外の方角は人工光でかなり明るいです。特に電照菊栽培の温室の明かりは、数が数ですから街明かりよりさらに近くて強力で、雲に反射するとあたりはオレンジ色に染まります。

また海岸沿いということは海抜ほぼ0メートル、地球の大気の底ですから、夜空は山岳地のような透明感のある深い色にはなかなかならず、茶色っぽいくすんだ色の日が多いです。


海は様々な表情を見せてくれます。天候不順などでしばらく行けなかったあとでは、びっくりするほど景色が変わっていることがあります。大きな潮溜りができていたり、岩だらけだった海岸が砂で覆われてわずかに上のほうが見えてるだけだったり、大雨でその砂が深くえぐられていたり。また潮の干満や波の荒れ具合など、全く同じ条件、同じ景色ということはおそらくないのかもしれません。


月が北寄りで海から昇らないときには、市内にある展望台に行きます。ここは「夜景100選」にも選ばれた場所で360度夜景を見ることができ、星を撮るには明るすぎますが、月なら夜景と合わせて撮ることができます。

市内には季節の花を楽しめる場所も多いですが、人家のとなりだったり街路灯に照らされていたりして、星景向きの場所が少ないのが残念なところです。


今は仕事や家の都合でなかなか遠くへ撮りに行けませんが、地元で撮れる星景の新たな魅力を求めて、これからも撮り続けていきたいと思います。

著者:河合孝子(かわいたかこ)
愛知県在住 日本星景写真協会準会員 中天星空クラブ所属