2017年3月号「星景写真への想い」

1.星景写真との出会いと現在
私が初めて「星景写真(せいけいしゃしん)」と出会ったのは、岡山県倉敷市にある倉敷科学センターです。
2008年2月17日に開催された熱気球の搭乗体験に参加したくて、倉敷科学センターを訪問しました。
そこで、偶然開催されていた日本星景写真協会~星の風景~第1部「夜の彩り」でした。特別展示室内には、美しい前景とともに美しい星空があり、しばし感動していました。 しばらくして、思い切って日本星景写真協会に入会しました。
倉敷科学センターでは、武井伸吾さん・安田幸弘さん・大西浩次さん・中川達夫さん・古勝数彦さん・竹下育男さん・小沼光良さん・安藤 宏さん・有賀哲夫さんなどの錚々たる方々が個展を開催されていて、個性あふれる美しい星景写真を見ることが出来て、勉強になります。星景写真の聖地といえる場所です。
2012年2月11日~4月8日には、第二回 日本星景写真協会 星景写真展 「星の風景」が倉敷科学センターで開催されました。この時、私も2010年7月にニュージーランドのテカポで撮影した「天へ続く道」を出展しました。

【作品1】天へ続く道(善き羊飼いの教会と天の川、再画像処理版) ニュージーランドのテカポにて 2010年7月

この「天へ続く道」というタイトルは、服部完治元会長(現在顧問)に命名していただき、タイトルの重要性を感じました。
2013年6月21日にパイインターナショナル(ピエブックス)から発売された「夜空と星の物語」の表紙に採用していただきました。
このコラムを書いている現在、2017年2月11日(土)~4月23日(日)の会期で、第三回 日本星景写真協会 星景写真展「星の風景」が倉敷科学センターで開催されています。土曜日と日曜日の午後には会場で星景写真のお話をさせていただいています。第二回写真展でお会いしたお客様にもお会いでき、差し上げた写真を大きくして、今も飾っていただいており、5年の月日を感じさせない出会いでした。また、写真SNS(GANREF)での広報を見て来場いただいたお客様・写真を見るのが大好きと言われる友人の方々とのお話も楽しいものです。

写真展の準備・運営にあたりまして、倉敷科学センターの三島学芸員さんをはじめ皆様に大変お世話になっています。
会期最終日の4月23日(日)には、私がギャラリートークをさせていただくことになりました。星景写真の撮影方法・私が最近思っていること・展示されている作品などのご紹介をさせていただく予定です。
★倉敷科学センターHP
http://www2.city.kurashiki.okayama.jp/lifepark/ksc/release/170211_ksc_release.html
第一部の写真展会場で各作品を眺めていると、前景が写真面の半数以上を占めている作品が多いことに気が付きます。私が星景写真撮影を始めた頃は、星空が写真面の大変を占めており、前景が少ない写真を撮っていたことが多くあり、最近はできるだけ前景を大きく取り入れた撮影しています。

2.撮影テーマ1 ニュージーランドのテカポ・マウントクック

【作品2】夢のひととき~善き羊飼いの教会と逆さオリオン座~ ニュージーランドのテカポにて 2015年7月

ニュージーランドのテカポやマウントクック周辺での星景写真・風景写真撮影は、私の1つのテーマです。
2010年7月にテカポを訪問した時に、最初にお世話になったのはアース・アンド・スカイ代表の小澤英之さんです。小澤さんは、星空ツアーを催行されていると同時に、テカポを「星空」というカテゴリで世界自然遺産登録することを目指しておられます。
http://promotion.yahoo.co.jp/news/airnewzealand/170206/
小澤さんに、「なぜ、星空が美しいのですか?」と質問すると、「南半球は塵(ちり)が少ないです。塵があると周りに水分が付着して、透明度が悪くなります。」とお話がありました。
ニュージーランドでは、光がとてもきれいだと実感します。昼間の風景も美しいですが、朝夕にはさらに美しさを感じます。光がきれいで、透明度が良いということは、素晴らしい星空が見えるということに繋がります。

【作品3】湖畔に咲くルピナス ニュージーランド・テカポにて 2015年12月

2011年5月に、写真家の野町和嘉先生から、「星空以外に、昼間の風景写真も撮りなさい。」というコメントをいただきました。それ以来、ロケーションハンティング(ロケハン)も兼ねて、昼間・朝夕の風景写真撮影を心掛けるようにしています。
★野町和嘉先生HP http://www.nomachi.com/
永い間、もやもやしておりましたが、星のある風景写真を撮るということは、昼間や朝夕の風景写真がまともに撮れる必要があると感じております。

3.撮影テーマ2 岡山県総社市 備中国分寺 五重塔
私が住んでいる岡山県倉敷市から備中国分寺までは車で20分程度です。自宅の庭から夜空を眺めて快晴であれば、直ぐにたどり着くことができます。濃い天の川を求めて岡山県内を走り回っていた時期もありますが、最近は「吉備路風土記の丘」のランドマークとなっている五重塔の星や月のある風景と向き合っています。

【作品4】さそり座が輝く瞬間(とき) 2016年6月

間もなく梅雨に入ると思われた日の深夜、五重塔の下に立つと、さそり座と共に火星・土星たちが光を放っていました。倉敷市方向・総社市中心部方向からの光害が多いこの地とは思えない澄んだ星空で、天の川も薄っすらと見えており、
誰もいない境内で至福の時間を過ごしました。
五重塔・木々・お地蔵さまが照らされているのは、左方向にある自動販売機からの光によるものです。
この写真の星の色を見ると、星には個々の色を持っているのが分かります。星を白飛びさせないで、星の色を出すカメラ設定が必要です。

朝日や夕日を五重塔と一緒に撮影される風景カメラマンが多いですが、薄明の時間帯の空は素晴らしい風景を見せてくれます。朝焼けの前や夕焼けの後になると、風景カメラマンがおられないのは残念なことです。
田淵典子さんが執筆されたコラム2016年4月号「薄明時間の星景写」 http://aspj.jp/post-1822/ が大変参考になります。

【作品5】 ルナ・ガーデン~備中国分寺~Ⅱ 2016年6月

星座や宇宙を題材にCGやプラネタリウム番組を制作されていて、素晴らしい星景写真を撮影されているKAGAYAさんと倉敷科学センターの三島学芸員さんのお二人と五重塔の横から昇ってくる美しい細い月を眺めながら撮影をしました。この「ルナ・ガーデン」というタイトルは、KAGAYAさんの美しい作品名からお借りしました。
★星天日和(ほしびより)シリーズ 「ルナ・ガーデン」
http://www.kagayastudio.com/sora/hosibiyori/luna_g/index.html#luna_garden
世界各地や日本各地の星空を精力的に撮影されているKAGAYAさんから学ぶことは多かったです。

最近、半月から満月の明るい月がある時に撮影することが多くなりました。月の光で前景が明るく照らされて、ISO感度を上げなくても、前景の表情がきれいに描写されます。そして、思った以上に星が写ります。

【作品6】 五重塔と冬の星たち 2017年1月

積雪後の深夜に五重塔の下で撮影した写真です。前景が昼間のように明るいですが、見た眼にもこんな感じになります。また、空の色がブルーになります。

4.まとめ
(1) 日本星景写真協会への入会を迷っている方は、思い切って入会しましょう。全国を巡回する写真展に出展したり、出版社が出版する写真集にメンバーの作品とともにあなたの写真が掲載される場合があります。撮影会に参加したり、作品の講評などをしてもらえます。
(2) テーマとなる撮影場所を決めましょう。そして、前景の歴史的意味などを調べると色々なことが分かり、向き合う姿勢も違って来ます。遠征しなくても、自分の身近にある良い前景となる場所があるので、探してみましょう。美しい星空を皆さんに知っていただくこと・未来に向かう通過点で記録を残すことは大切だと考えています。
(3) 最近は、フォトブック作成サービスを利用して、個人で簡単に写真集を作成できるようになりました。写真集を作成すると、自分に何が足りないか分かります。
(4) 明るい時間にロケハン(撮影場所探し)をしましょう。そして、明るい時間に風景写真も撮影しましょう。星景写真は、星のある風景写真なのです。
(5) 星には、個々の色があります。出来るだけ、星の色が出るようなカメラ設定で撮影しましょう。
(6) 薄明の時間にも撮影しましょう。新たな空や星の美しさを発見するはずです。
(7) 明るい月の光は前景を照らしてくれます。高感度で撮影しなくても、無理なく前景を照らしてくれるので、クオリティの高い前景になります。月の光をたくさん利用しましょう。
(8) 今回、ご紹介した写真などをアルバムにしています。撮影データなどをご覧いただければ幸いです。
http://ganref.jp/m/milkywayf/portfolios/album/18221

著者: 船橋 弘範 (ふなはし ひろのり)
岡山県倉敷市在住 日本星景写真協会 準会員
岡山アストロクラブ会員、写団ふくろう会員
ポートフォリオ: http://ganref.jp/m/milkywayf/portfolios
撮影記など : http://ganref.jp/m/milkywayf/reviews_and_diaries