私は今年の春から「天文リフレクションズ」という、いわゆる「キュレーションサイト」を運営しています。 幸いにも、天文分野にはこれまで専門のネットメディアがまだなかったこともあり、直近では月間1万ユニークユーザ程度のアクセスをいただけるようになりました。 既存の天文雑誌やSNSの天文コミュニティがある中で、メディアとして一定の存在感を持てるようになるにはどうすればいいか、日々試行錯誤しながらの毎日です。
「天文リフレクションズ」では、ネット上に公開されている数々の星景写真・天体写真の中から、「今日の一枚」という形で作品をピックアップさせていただいています。 雑誌のフォトコンとは全く立ち位置が異なり、編集部(=私)が勝手にセレクトして紹介文とともにサイトに掲載させていただく形式です。 (もちろん撮影者様には許諾をいただいています。) 作品として優れている(と自分が思う)ものを選ぶことは勿論なのですが、「その人だけの1枚」の作品から、感じ取れるものすべてを「鑑賞し尽くす」という視点で、できるだけ平易な文でご紹介するようにしています。
その中で印象的だったエントリをいくつか再掲させていただきます。
http://reflexions.jp/blog/ed_tenmon/archives/1324 この作品は福岡県朝倉市の三連水車です。ニュースでご覧になったことがいらっしゃるかもしれません。 この記事のアップのほんの数日後、朝倉市を豪雨が襲いました。 幸いにも三連水車には致命的な被害はなく、現在は稼働を再開し周辺の田畑に水を注いでいると聞いています。 星のある風景の、記録としての価値を再認識した一枚です。
http://reflexions.jp/blog/ed_tenmon/archives/1721 この作品は京都山科から見た夕焼けの三日月です。 ありふれた日常の中のこの美しい風景を、平安京の清少納言はどう感じたのだろうか?ふとそう考えた結果の考察です。 結論は保留しますが、普遍的だと自分が感じる美しさも、実は「主観」の産物であると再認識した一枚です。
http://reflexions.jp/blog/ed_tenmon/archives/1453 この作品は、石垣島での星空ポートレートの撮影会での作品です。 ライトアップを伴うこのようなジャンルは伝統的星屋のマインドからはやや遠いのですが、「今日の一枚」で最もアクセス数の多かった星景作品です。
「天文リフレクションズ」のコンテンツの大半は、ネットに公開された第三者のブログ記事やニュース記事を、そのまま・ないしは若干のコメントを添えてご紹介する形式ですが、一部は自前の記事による発信も行っています。 ページ数の制約のないネットメディアの特徴を生かし、またSNSや天文雑誌では触れにくいようなテーマにも取り組んでいます。 そのいくつかをご紹介したいと思います。
http://reflexions.jp/blog/ed_tenmon/archives/1782 「星景写真」に限らず広く写真の世界では、先端も裾野もかつてない変化と広がりの最中にあります。 この記事は、デジタル化されて「なんでもあり」になっている昨今のネット上での写真のあり方について、自分なりのひとつの結論をまとめたものです。 何が良くて何が良くないかは、誰かに決めてもらうものではなく、自分で選ぶものだというメッセージです。 この記事では、例えばASPJのような、一つの理念に基づいて具体的な価値基準を生み出す側の存在について十分に触れることができなかったのが心残りなのですが、それについてはいずれ別の形で発信できればと考えています。
http://reflexions.jp/blog/ed_tenmon/archives/1471 高性能なデジタル機材により、星空の写真撮影のしきいは一気に低くなりました。それらを駆使することで天体写真のレベルも一気に高くなっています。 その一方で、これから星空の撮影を始めたいと考える「入門者」に対するサポートが、必ずしも十分とは言えないのが現状ではないでしょうか。 そうした「先端のマニアと、裾野の入門者のギャップ」を埋めるべく、「潜在的な天文ファン予備軍」をターゲットにした記事に今後力を入れたいと考えています。 上記記事はその第一弾で、まったくの入門者の「美しい星空を見たい」という動機を、具体的な行動として実現するためのガイドを目指したものです。 そんな中、たまたまご縁があり、「トリセツ」というアプリのWebサイトに星空撮影の入門講座を連載させていただくことになりました。 (「星空撮影の入門講座」のリンク先は https://torisetsu.biz/news/2017/0807_w008_tentai.html) こちらと合わせて、情報発信していきたいと考えています。
このようなサイトの運営を本格的に初めてはや半年、個人的には本来の自分の撮影にあてる時間が激減してしまったことが悩みですが、ネット・リアルでの多くの方との交流はそれに余りある充実したものでした。 ASPJ所属の皆様にも多数弊サイトにアクセスをいただいており、「今日の一枚」でも作品を多数ご紹介させていただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。 今の時代、これまで以上に多くの人の関心が星空に向かっていることは間違いありません。星空を見上げ、それを写真という形に残すことの楽しさ・素晴らしさを、より多くの人に伝えていきたいと考えています。 今後ともよろしくご支援・ご指導のほど、お願い申し上げます。 タイムラインの日食の写真の数々を見ながら、2035年に夢を馳せつつ。
2017年8月22日、記。
自前の星景写真が一枚もないのも何なので、一つだけ。 シンプルな1枚撮り星景を撮るのも大好きなのですが、趣向を凝らした変態的な撮影もまた大好きです。 ASPJ九州のオフ会で撮影した、近赤外による天の川(星・風景は別コンポジット)です。遙か遠くに近赤外ならではの阿蘇山の噴気がかすかに見えています。
著者:山口千宗(やまぐち ちひろ)
福岡市在住 リフレクションズ・メディア代表、日本星景写真協会 会友
日本唯一の?天文ファンのための全方位キュレーションサイト「天文リフレクションズ」を運営。 天文ファン500万人化を目指して日々絶賛情報発信中。五感で感じる星空体験がモットー。天文宇宙検定2級。夢はベテルギウスの超新星爆発を見届けること。
個人ブログは http://reflexions.jp/blog/star/