新年あけましておめでとうございます。
皆様の中には、今年は何か新しいことに挑戦しようと考えていらっしゃる方もいらっしゃることと存じます。
私からひとつ、星景写真の撮影仲間を増やす方法をご提案したいと思います。
夜空の撮影を始めてから約15年。
近年、「星空撮影を教えてほしい」と言われることが増えるようになりました。
そこで、一昨年から、夜空撮影の未経験の方と時々一緒に出かけるようになりました。
基本的にマンツーマンで現地に直行する方式です。
少し振り返ってみたいと思います。
お一人目は、一眼レフが初めての友人、適用は「姫様コース」。
感度・絞り・シャッタースピード、ピント合わせまでこちらで一通りセットし、三脚に取り付けてお渡しします。
雲台の締め方をご説明して、
「ファインダーの中が私たちのキャンバスです。あなたの美意識に従って一番素敵なものをそのキャンバスに収めてください。シャッターボタン(またはレリーズボタン)を押せばOKです!」
背面液晶に映し出される夜空の画像に、私も姫様も心踊ります。
状況に応じて、感度・絞り値・シャッタースピードを調整して差し上げます。
途中で一段落、もしくは空が曇った合間に車に戻り、SDカードに記録された画像をノートPCに表示し、ともに喜びを分かち合います。
簡易的にRAW現像をして差し上げてもよいでしょう。
そして、おやつタイム。
写真に収められた主な星座、天の川、それにまつわる神話などの解説をさせていただくのもよいですね。
この方は、この一晩のうちに撮影方法をマスターし、私がなにもお手伝いする必要がなくなり、カメラの諸設定のどの数値を上げ下げすればどのように結果に反映するかを理解してしまいました。
そして、このあとすぐに、単独で夜空の撮影に出かけて行かれるようになりました。
元々、登山や少しハードなハイキングが趣味でいらしたので、私が決して行かない(行けない)大自然の中の星景写真に、今ではすっかり私のほうがファンになっています。
お二人目の方は、撮影歴はそれなりにあるけれど、夜の撮影は初めてという方。
「つわものコース」では、行く道がてら、私が運転席からカメラ設定を順序よくご案内し、助手席のご本人に操作していただきます。
…と思ったら、それが意外と大変でした。
普段使っているカメラでも、被写体が変われば未知の機能があるものです。
ここに時間がかかってしまうと、日は暮れゆき取説は読めなくなり、バッテリーも無駄に消耗してしまいます。
私の方で、事前にメーカーと機種名を伺って予習しておくべきでした。
また、決して短い時間とは言えない移動中のおしゃべりも大変有意義なものです。
この方は華道教授でいらしたので、大自然の中の生命を花器に美しく移し替えることは、写真との関連性もあるように思われ大変勉強になりました。
お互いの顔が見えない夜のドライブで、いつもより少しだけ真剣なおしゃべりも良いものです。
三人目。
8歳(小三)。「殿様コース」
この方はあまり深夜まで連れまわすわけにいかないので、事前にあたりをつけていた、家から最短30分のロケ地へ走ります。
カメラ・三脚全てセットして差し上げて、雲台の取り扱いだけをお教えして、脚立の上に腰掛けていただいてお撮りいただきます。
夜の水田地帯に響き渡る虫の声、蛙の声、飛行機の点滅灯…。
非日常を体験していただき、夜空の神秘に思いを馳せていただきたいものです。
「ママの三脚蹴っちゃった」とか「靴脱げたー、拾って」などの発言があった場合にも、決して怒ってはいけません。
その人は未来の写真家、もしくは天文学者かもしれませんよ。
「共に喜ぶ」
これが大前提です。
ちょっとした遊び心で、撮影を楽しんで頂く工夫もあると良いでしょう。
ちなみに、衣装の下はパジャマを着ており、帰宅したらハミガキして布団に直行できるようにしておきます。
ちなみに、このようなことで自分の集中力が途切れるようではいけませんよ。
その昔、オーロラを追って外国の未知の大地を旅していた時には、地理不案内、英語苦手、しかもペーパードライバーという自分でしたが、時に零下40度を下回る寒さに命の危険を感じながらの一人旅で、撮影にかけられる心の余裕はほとんどない中でのチャレンジでした。
そのことを思えば、自分に負荷をかけるトレーニングを積み重ね、いつか北の地に舞い戻る日に備えていると言っても良いかもしれません。
ただし、今までの経験では、ご一緒したどの方も、私よりはるかに高い感性の持ち主で、それぞれ私にはとても撮ることのできない傑作をカメラに収めてお持ち帰りになりました。
そのこと自体が私の喜びでもあります。
このコラムをご覧になる方々の中には、かなりハイレベルな星景写真家さんも多くいらっしゃると存じますが、そのような皆様も、ときには新しい仲間と撮影を楽しんでみてはいかがでしょうか。
宇宙の彼方から届く光が、自分の目の前のカメラの中で像を結ぶ。
それを写真として写しとめることの不思議さ、楽しさ、神秘性を改めて感じてみませんか?