2018年8月号「怠け者の星景写真」

まずは、平成30年7月豪雨(西日本豪雨)に際し、被災された皆様にお見舞い申し上げますと共に、亡くなられた方のご冥福を心よりお祈り申し上げます。


このコラムの順番が回ってきたのですが・・・。全くの想定外でした。会友ですし(笑)
何を書こうか色々迷ったのですが、協会の他の会員の皆様とは違い、いかに自分が「怠け者」であるかということを書こうと思います。

会員の中で恐らく、いや間違いなく天体写真撮影については一番の怠け者です。
最新で高級なカメラを購入し、レンズ沼から抜け出せず、夜な夜な撮影にでかける会員の皆様とは異なり、最近の私は一切そういうことはしません。
わりと夜まで仕事をしているから・・・というのは言い訳で、たぶん仕事に関係なく夜の写真はあまり撮っていないというのが正直なところです。

たぶん私の人生で星景写真について一番アクティブだったのは、10代だっただろうと思います。
1986年のハレー彗星の時はまだ高校生でした。望遠鏡ショップの店長や常連さんに撮影ポイントまで連れて行ってもらったり、名古屋市科学館の天文クラブで服部前会長が中心となって活動した「B(バルブ)の会」への参加などで、祖父の遺品のカメラを使って撮影していたころが今になると懐かしいです。
この「Bの会」がなければ、星の写真には関心すらなかっただろうと思います。

ハレー彗星 1986年3月9日 愛知県にて撮影

その後、星の撮影に少しずつ足が遠のいていくのですが、それには大きな理由がありました。
プラネタリウムの職場に就職したことです。仕事で星のことをはじめると、星の写真を撮ることが段々億劫になってきてしまいました。
趣味が仕事になってしまったわけで、写真撮影が仕事の息抜きにならないと言った方が良いのかもしれません。星の写真を撮ることに苦痛を覚えるようになってしまったのです。
プラネタリウムで仕事されている人は、バーチャルでもリアルでも星について熱心に頑張っている人が多い中で、私は怠け者だったといえます。
それでも話題になった1996年の百武彗星、1997年のヘール・ボップ彗星の時は、岐阜や長野などあちこち車を走らせて、星景色写真を撮っていたことが今となっては懐かしい思い出です。

ヘール・ボップ彗星 1997年4月1日 長野県野辺山にて撮影

その後、結婚さらに転職で福岡に来たことで、ライフスタイルが一転してしまい、星景写真どころではなくなってしまいました。
不慣れな九州の地ということはもちろん、対馬海峡の漁火光害や、黄砂やpm2.5といった大気汚染など、出身の名古屋に比べて九州はもっと星が見えるだろうという過剰な期待があったかもしれません。星が思ったほど見えないことに正直がっかりしてしまい、やる気が失せていきました。
それに加え、フィルムからデジタルへの移行期ということもあり、その波に乗り遅れたのかも要因と思います。徐々に写真撮影が面白いと感じなくなってしまったのです。

もう随分写真撮影の気力が遠のいたのですが、2年半前スナップ写真を撮ることを目的として「CANON EOS M3」というコンパクトミラーレスカメラを購入しました。
当時はレンズ2つ付きで10万円弱くらいでしたでしょうか。

キャノン EOS M3

正直なところ、このカメラは星景写真向きとはとても言えないです。レンズのピントがオートに依存しすぎていて、無限遠がどこにあるのか、レンズの外観を見ているだけではわからないのです。
星の写真を撮るときは、マニュアルにしてモニターを10倍拡大して星のピントをとらねばならず大変面倒です。しかも専用のレリーズもありません。(サードパーティーのリモコンしかない)
そのような撮影のちょっとしたコツが必要なものの、日中の撮影は楽でかさばらなず、またコンパクトならではの気軽さはこの上なく、最近はこれを使ってちょくちょく撮影するようになりました。

2016年2月 カッパドキア/トルコにて

2年前に出張でトルコに行ったときに、せっかくだからとカッパドキアに行ってきました。夜の天気はあまり期待していなかったのですが、晴れていたので写真撮影。
現地のホテルの人にお金を払って運転してもらい、何か所か巡って撮影しました。ここはレンタカーで車を借りて、きちんとロケハンしてから撮影すると、大変面白いだろうなと感じました。
ただ思いのほか街灯のナトリウムランプが結構気になるのですが。
荷物が多い中でカメラがコンパクトであることはとてもありがたく、新たな持ち物を増やさすこういった写真を撮ることは大変面白いなと思いました。
ただ海外は治安状態を良く考えて行動せねばなりません。

2017年5月28日 CANON EOS M3 22mmレンズ ソフトフィルタ使用 ISO3200 f/2 15sec 釈迦岳(大分/福岡県境)にて

このカメラはもちろん RAW撮影もできますので、現像次第でそれなりの撮像を得ることができます。
ダメかな?と思う写真でも、調整さえできればなかなか見ごたえのある写真になったります。

2016年10月5日 CANON EOS M3 22mmレンズ ソフトフィルタ使用 ISO1600 f/2.2 20sec 福岡県宗像市にて

漁火光害で諦めていた家の近所ですが、条件さえよければまずまずの写真が取れるのもデジカメの進化によるところが大きいと思います。

これだけ星が写れば星景写真再燃!!と、普通ならそうなるのでしょうけど、そのような兆候は今のところほとんどありません。
やっぱり「怠け者」ですので、特に目標を作るわけでもなく、これからもマイペースで、のんびりゆったり楽しめたらと思っています。

著者:加藤 治(かとう おさむ)
福岡県宗像市在住 日本星景写真協会 会友
合同会社アルタイル 代表社員(プラネタリウム番組配給会社)
https://altairllc.jp/