2018年11月から星の動画を始めました。YouTubeなどに上がっている星の動画というとそのほとんどがタイムラプスだと思いますが、私がはじめたのは連続して撮影した写真から作るタイムラプスではなく、フルサイズ一眼レフの動画機能で撮影する動画となります。タイムラプスと分けるためにリアルタイム動画と呼ばれています。
ジンバルにカメラを載せたところです。これを手持ちで星空を撮影しています。
きっかけはCanonが業務用に作った超高感度ビデオカメラME20F-SHによる映像を見たことでした。
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この映像を見たときは、ついに動画で天の川が撮れる時代が来たのかと驚き、いつかカメラの高感度性能が上がった時はぜひやってみたいと思いました。それからしばらくたった時にYouTubeで星関係やジンバル関係の動画をアップしている「よっちゃん」がSony α7ｓⅡで撮影した月夜の動画のワンシーンにオリオン座がきれいに写っていたのを見て、今あるカメラでも月明かりくらいの明るさならそれなりにきれいに写ることを知りました。
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それならば次期モデルのα7ｓⅢなら星の動画がきれいに撮れるのではないかと思いその発売を待つことにしました。ところがいくら待っても発売する気配はなく動画を撮ってみたいという気持ちは変わらなかったので、しばらく新型は出ないと判断して2018年11月にα7ｓⅡと明るいレンズを2本、そしてジンバルを購入しました。カメラの選定はその時点ではSonyのα7ｓⅡ、α7Ⅲ、PanasonicのDC-GH5Sの3択でした。何人かの詳しい人にもお聞きしたのですが星に特化するならα7ｓⅡと全員に言われ古いモデルなのですがこれに決めました。どのカメラ選んでも今のカメラの高感度性能では満足できる画像は撮れないことはわかって購入しているので、これを使って動画編集の練習をするという気持ちで購入しました。
レンズは明るければ明るいほど良いのでF2.8より明るいものと考えてSIGMA 14mm F1.8を購入しました。ところが星景写真ならこの選択は正しいのですが私がやろうとしている動画では違っていたのです。まずこのレンズは重すぎてジンバルでは使えないのです。動画撮影はジンバルだけではなく固定でも撮るのでまったく使えないということはありませんが、固定で撮った場合は十分な露出をかけたタイムラプスに比べるとかなり見劣りしてしまいます。僕はジンバルというものが無かったら星の動画は始めなかったかもしれません。これがあることで自由に動き回って星の動画が撮れるのでタイムラプスとは別物の絵が撮れるのです。
カメラを購入した直後のタイミングでSony新型のレンズ24ｍｍF1.4（SEL24F14GM）が発売されました。F1.4の明るさで重さはわずか450ｇと理想的なレンズで、レビューも良かったので思い切って購入しました。24ｍｍと星景写真用としてはやや長めなのが気になりましたが、使ってみるとこの焦点距離が動画用としては最適なことがわかりました。写真と動画の違いですが、動画はカメラを動かせるということです。当たり前ですよね。こんな当たり前のこともわからずにいました。星景写真で多く使う15ｍｍでは動画用としては星座が小さすぎて感じました。そういう意味では24ｍｍがちょうどよい大きさだったのです。
それからジンバルの操作方法や編集ソフトについて勉強しました。ジンバルはPILOTFLY Adventurerという機種で先出の「よっちゃん」のショップから購入しました。どうせ撮るなら４Kでlog撮影ということでPCも買い替えを余儀なくされ、ハードルを上げてしまったので未だにわからないことだらけで四苦八苦しています。
ソフトはオーロラ写真家の田中雅美先生にもアドバイスをいただきDaVinci Resolve 15と Adobe Premiere Pro CCを入れました。ソフトは参考書も買ったのですが専門的なことが多くてかなり難儀しましたが、本ではなくYouTubeで検索すると解説動画がたくさんあることがわかり、これで勉強しました。今の時代、学びはYouTubeなんですね。
さて、そんな手探り状態での撮影を何回かやってすぐにふたご座流星群の時期がやってきました。これは動画を撮る絶好の機会だと思い2晩連続で撮影にのぞみました。一晩目は山中湖畔、次の夜は山梨県北杜市です。ジンバルで動画を撮りながら固定の写真で流星を連写し、その間に星景写真も撮るというスタイルです。動画をはじめると星景写真と並行して撮るのでけっこう忙しいです。流星群ですが、一晩目はあまり出ないなぁという印象で、2晩目は今年は多いかもという印象でしたが、帰宅して動画をチェックしたら驚きました。なんと2晩で100個近くの流星が写っていたのです。写真でしたら複数のカメラでもこんなに写ることはまずありません。特に山中湖ではあまり流星が流れていない印象でしたが、どの動画にも必ずと言っていいほど流れ星が写っているのです。圧巻なのが2晩目で、17秒間に7個流れた動画もありました。これって流星雨状態ですよね。しかも85ｍｍの中望遠でも写りこみ、いったい全天ではどのくらいの流星が流れていたのだろうかとびっくりです。写真だと明るい流星しか写りませんが、動画の場合は暗い流星もとらえることができるので数が増えるのだと思います。この経験でリアルタイム動画は流星には最適なことがわかりました。
星空のある風景リアルタイム動画・ふたご座流星群2018山中湖編
星空のある風景リアルタイム動画・ふたご座流星群2018水車の里公園編
いくつかの動画をYouTubeに公開していくつかご意見をいただきました。星の写真を撮っている方々からはまだ星の色が出ないし、写真に比べると写りは良くないねという反応でした。確かにその通りでまだまだ現行の機材では理想とは程遠い動画なのですが、僕の当初の予想はもっとだめだと思っていたので、「割とよく写るじゃないか」というのが正直な印象です。なんと言ってもシャター速度1/15秒前後、ISO102,400前後で撮っているわけですから星景写真の30秒、ISO6400と比べたら相当ハードルが高いわけです。
ここまでリアルタイム動画を撮影してきて一番感じたことは「肉眼で見たイメージにかなり近い」ということです。たっぷり露出をかけた星景写真ですと肉眼では見えない星雲なども写ってほんとうにきれいな写真になりますが、実際の見た目とはかなり違うので「山に行くとこんなすごい星が見えるんですか？」と聞かれるとかなり違いますとしか答えようがなかったのですが、この動画でしたらリアリティのある映りになるので、その場の雰囲気を伝えるという役割は果たせるんじゃないかなと感じています。
星空のある風景リアルタイム動画・東浪見海岸の星空
見た感じに近い写りに映っています。星を見ている人たちなども入っているのでその場の情景がわかるかと思います。
また、写真との大きな違いは自由であることです。ジンバルを使えばまっすぐ歩いても、横向きに星空を固定しながら横移動もできます。長めに撮っていらない部分はカットできますし、拡大も回転もなんでもできます。星がメインの動画ではありますが、部分で近景や花や人などを入れてもいいですし、固定してもパンしても何しても良いのです。ただし自由であるがゆえに、撮影に際してはある程度のシナリオを描いて望まないと同じようなシーンばかりになってしまうので、かなりの工夫は必要です。まだ自己流でやっているので専門知識ももっと学ばなければと思っています。
写真では入れられなくて動画だとできることに「音」「音楽」があります。ここに白鳥飛来地として有名な埼玉県川島町で撮影した白鳥と星の動画があります。撮影後に動画を確認したところ、白鳥の声が入っていたのであえて音楽なしで編集しました。この場所では過去2回ほど星景写真を撮影しましたが、イメージ通りの作品が撮れませんでした。それが動画だと声や望遠で撮影した白鳥の絵を入れたりできるのでその雰囲気をとらえることができました。
また、入れる音楽は最初のころはネットで無料の音楽を探していたのですが、クオリティのことや著作権の問題が起きないという安心感から今は有料の定額サイトから使っています。最初のころ音楽は後付けで最後はフェードアウトさせて切ったりしていましたが、徐々に音楽の重要性に気が付いたので、今は編集段階で曲を選んで最後は曲に合わせて長さの調整をしています。
星空のある風景リアルタイム動画・川島町の白鳥と星空
さて、何人かの人から前田さんは動画中心になって星景写真はやめてしまうんですか？と聞かれたのですがそれはありません。むしろ動画をやればやるほど写真の良さもあらためて感じるようになりました。制約がある中でどう表現するかという写真の難しさ、面白さもわかっていますのでこれからは二刀流でいきたいと思います。今のところ写真と同じペースでほぼ毎週YouTubeに新作動画をあげていますので時間があるときにご覧いただければ嬉しいです。
巨大パラボラアンテナと星空
ジンバルならではの特徴が出たおもしろい動画になりました。この動画は100％ジンバルの手持ち撮影です。
著者：前田徳彦（まえだのりひこ）
埼玉県上尾市在住 日本星景写真協会 正会員
星空のある風景写真BLOG：http://starwalker.jugem.jp/
星空のある風景リアルタイム動画・YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UChlcPGBBbdux_k7oOFXmg_Q
Instagram：starwalker0202
