2018年9月号「宇宙科学と私」

★光と私
小学 3 年の夏休み、夕方 5 時のチャイムが鳴ると 公園から一斉に友達が帰っていく・・・。 家庭環境に恵まれず、家に帰るのはとても苦痛だった。 滑り台のてっぺんに登ったまま、1 人ぽつんと体育座り。 沈んだ夕日の色が、空をオレンジと藍色に染め始める。
そんな中、ひと際明るく輝く光を見た。 9 歳の自分にそれが何かまだ分からない。 その瞬間、私は星空の虜になった。
その日から、毎夜欠かさず見上げる星空に少しずつ 疑問を抱くようになった。 「星の色が違う」「明るさが違う」・・・幼い私の疑問。 私の飽くなき探求は全て、あの夏休みから始まった。

(地元の夕空)

★自然と私
生まれた時から私は常に「自然」の中にいる。 広島県呉市で育ち、歩いて 20 歩ほどには海があった。 台風が来れば、普段は穏やかな瀬戸海も防波堤を越える。 雨も多い記憶がある。 そして、曾祖父母は被爆したがとても長生きした。
そんな故郷を小学生で離れ、宇宙好きになる宮崎へ。 夏は暑く、冬は積雪。大雨、台風は序の口!1 番の恐怖は雷。 霧島連山の麓、天候や地底の変化が激しく「自然」を把握しないと、 時に判断を誤り危険にさらされる・・・。 そう、もう一つは火山。噴火はここ 10 年内だが、昔からガス、 ヒ素の含まれた汚染水など地元だけでニュースには成らない 自然との共存が余儀なくされていました。 私は思います、科学とは宇宙とは「生きる」事だと。

(自宅から近い新燃岳の様子)

★科学の未来
2 週に 1 度市内の小・中学校へ、月に 1 度は児童養護施設に 訪問し JAXA 宇宙教育としてお話をしています。 子供たちの好奇心と探究心は底なしです。次から次に 湧き出る疑問、「空を飛びたい」「月に住んでみたい」 「宇宙人おらんの?」「何で地球は同じ所を回るの?」 色んな事を考えてる時の、子供たちの表情はとても いきいきしていて、私も頑張ろうと勇気をもらえます。

(左:天体観測、右上&右下:小・中それぞれの科学で作るスイーツ)

将来、子供達がどういった夢に進もうが構いません。 ただ、自分たちが住む地域の人、まわりの友達とどう過ごし 困った時には助け合い、声を掛け合える様に育ってくれる様、 自分の大好きな「宇宙科学」というツールを使っているに 過ぎません。自分が行っている取り組みが良いか悪いかは
正直、今も分かりません。ですが日々、自分自身が勉強し 常に考える事に挑戦したいです。 そして南九州の子供達は幸いなことに、内之浦発射場からの ロケットや種子島宇宙センターからのロケットも小さくですが 見え、宇宙科学を体感できます!

(内之浦宇宙空間観測所よりイプシロンの軌跡)

こうした南九州ならではの光景も、撮っていきたいです。 ぜひ、将来の日本を担う子供達にも、ワクワクと挑戦の気持ちを 忘れないで欲しいと心から思います。

★写真と私
写真の事は何も分かりません。カメラの取り扱いも 説明書を読んでも全く覚えません。 なぜ始めたの?と聞かれたら答えはたった 1 つ・・・。 ”人が撮った写真ではなく、自分が撮った写真を使って伝えたい”
そう思ったから。
そんな決意を胸にカメラを購入し、1 年 7 ケ月が経った。 カメラ 1 台、レンズ 1 本だけ。赤道儀も持ってません。 それでも私は楽しい写真ライフだと思っています! そして地元での星景写真は、子供達が知っている風景に 星空があることで、きっと宇宙を身近に感じるのだと思う。

(自分で撮った写真を初めて子供達に見せた日:小学 2 年生)

操作覚えも悪く、忘れっぽい私ですが、これから少しずつ、 成長できるように、こちらでお世話になりたいと思います。 素敵な先輩方の作品を見て目を肥やして、いつかは 自分も皆さんの様な写真を撮りたいです。 どうか宜しくお願い致します。

著者:上野 晶(うえの あき)
宮崎県在住、星景写真協会 会友
天文教育普及研究会、JAXA 宇宙教育指導 小・中読み語り支援活動
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