2019年9月号「柔らかな星景表現の試み」

初めまして。この度、縁あってコラムを担当させて頂くことになりました中山といいます。宜しくお願い致します。

私が星空に興味を持ったのは、学生時代に登山をして見上げた満点の星があったから。時が経ち、段々と星景写真にのめり込み、今ではカメラで目一杯の星を写せるようになりました。カメラの性能向上と共に、益々解像感の高い写真撮影が可能になった昨今ですが、そういった中で、最近の思うところは、あの頃皆でぼうっと眺めた、純粋に綺麗だなぁ~と感じた雰囲気・心情を星景写真で表現することは出来ないものだろうか?ということ。このテーマに応える表現を探すため、私の試みはスタートしました。

写真表現で柔らかな表現と言えば、ボケ味が一番に思いつきます。最近ではBokeh Photoというジャンルまで出てくるようになりました。一般的には花や夜景を幻想的に見せる手法として使われていますが、星景写真にも取り入れることが出来れば、世界観としては繋がるはず。このように考え作品を作り上げることにしました。

今回、そのうちのいくつかの写真を、この場を借りて紹介させていただきます。尚、掲載写真は比較明合成等を利用していますが、全ての写真は三脚固定のもと、カメラ・レンズを変えずに撮影しています。

「ふもとの花畑」

星景写真では広角レンズを用いることが多いため、どうしても花が小さくなりがちです。この写真では標準画角のレンズで、花を大きく写し、さらに花に近づくことで、花の存在感を強調しながら星空も入れて撮影しています。撮影にはボケ質が綺麗で、かつ星空に適した明るいレンズを選択しました。

「光舞う森」

空に輝く星と地上に舞う蛍の光。自然の光を使ったボケの代表と言えば蛍ですが、星に併せて点光源の蛍にこだわり、ヒメボタルの群生地にて撮影しました。尚、背景の草木は暗くなる直前に撮影しておきました。ヒメボタルはゲンジボタルより低く、より暗いところを飛ぶ性質から、カメラはなるべく低い位置・暗い場所から、空を見上げるように仕掛けました。

「煌めく夜に」

写真の右下の光源がボケているにも関わらず、同様に遠距離にある富士山はピントが合っていることがわかりますでしょうか?通常、ピント位置は手前か奥に移動しますが、レンズを傾けることにより、画面の上下左右にもピントを振ることが出来ます。街明かりのボケを狙った撮影でしたが、副産物として星も大きくダイナミックに写りました。

「幻想の夜」

夜景と星空は、その明度の差から、なかなか共存が難しいものです。この作品では、街明かりを大きくボカして撮影した画像を、比較明合成により星景写真に加えることで、幻想的な雰囲気を作り出しました。撮影後に気付かされましたが、夜景の光も星と同様に、様々な色を持っています。この色彩が写真に華を添えてくれました。

如何でしたでしょうか。本来、ピントをしっかり合わせて撮影することが前提な星景写真に、写真のボケ表現を加えることで、柔らかな光景を作り出すことが出来ました。王道で無い撮影法・表現であるが故に、賛否の分かれることもあるかもしれませんが、もし少しでも気に入って頂ける方がいらっしゃるようであれば、大変嬉しいです。今後も様々な表現を学びながら、撮影を楽しんでいきたいと思います。末筆ながら日本星景写真協会の皆様、執筆者の紹介をして下さった石原さん(先月号担当)、このような機会を与えて頂き、ありがとうございました。

ススキ原の夢

著者:中山 武史(なかやま たけし)
宮城県在住
仕事の都合により東京→中国地方→東海→東北と移り住み、各地の景色・出来事を楽しみながら撮影を続けている
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