2019年8月号「より伝わる作品を作るために」

初めまして。星景写真など撮っている石原大稔(だいとしぃ)と申します。

自分自身は星景写真協会の会員ではないのですが、星景写真家の北山さんからご紹介にあずかり、星景写真協会のコラムの8月号を執筆させていただきます。

星景写真を本格的に始めたのは約10年前。とはいえ周囲には星景写真などを撮る方などおらず、大変苦労しました。そんな時、飯島裕先生のワークショップに参加して星景写真の撮り方を教えていただき、知ってれば撮れると実感しました。そのうち、自分で撮るだけでなく撮る楽しさを伝えるため撮り方を共有するようになり、縁あって写真展や写真講師などをさせていただいております。

そんな私が普段思っていること、心がけていることを、今回のコラムでは書かせていただこうと思います。

写真は「コミュニケーション」

「秘密の花園」
ヨーロッパの建物は周囲が建物で中庭のあるような作りのものが多い。アートホテルに宿泊すると、外観からは想像つかない素敵な空間が広がっていて、自分は驚かされた。

皆さんは、撮った写真をほかの方に見せることも多いと思います。何気なく見せているとは思うのですが、見せるということは写真を見て何か感じて欲しいからではありませんか? ということは、何らかの反応が欲しいということで、これは「コミュニケーション」と言えます。

では、その写真を見せて撮った時に感じたこと、見て感じて欲しいことがうまく伝わっているでしょうか? 写真だと、「勝手に感じてくれればいい」というのも日本ではよく言われます。でもそれは、会話でいうならば、ぶっきらぼうに言葉を投げつけるとか、綺麗な言葉だけど中身が無く忘れ去られてしまう。そんなものではないでしょうか? 見せるのであれば、何かを伝えたい。そして伝えるのであれば丁寧に伝えたい。これが自分が普段から考えていることです。

「想い」を伝えるために

「Bon voyage~星空への船出~」
夜のロケット打ち上げの時に感じていた「星の海に旅立つ」というイメージを具現化するため、連続撮影した写真を現像・合成して作成

想いを伝えるための手段として、今のカメラの表現力は足りていますか? もし足りない、そしてその想いを伝えるためであれば、積極的にいろいろなテクニックを使うのも有りだと自分は考えています。もちろん何を使って、何を使わないかは人それぞれの考えがあると思います。しかし、何々を使っているから、俺は認めない。何々をしていないから駄目だ。と、全面否定するのは単なる思考停止に感じます。あくまで表現したいものにとってその手法が適切かどうか?より良い手段がないか?を考えるべきではないでしょうか?
人に見せる写真では撮影術が目的でなく、撮影者の意図がよりよく伝わる作品を作るのが目的なのですから。

機材の進歩が新しい「チャレンジ」を生む

「天と地の狭間」
手振れ補正性能の向上により、ようやく機内から眺める天上の星と地上の灯りの美しさを表現できるようになった。

カメラやレンズそのほか機材は進歩しています。わかりやすいところでは、高感度や長秒撮影の性能向上で星景写真が気軽に撮れるようになり、レンズの性能向上でより星空を精緻に描くことができるようになってきている。ということは、皆さんも実感されるところだと思います。

しかし、それに甘んじてただ単に前回撮ったものより画質が綺麗なだけの写真を撮っていたりしませんか? これって、会話に置き換えて考えると、「同じことを繰り返し繰り返し、話すだけの人」ではないでしょうか?

せっかくの機材の進化を単なる画質向上だけ、と捉えてしまうともったいない。機材の進歩をうまく生かすと、今までうまく撮れずに作品と呼べるクオリティに達していなかったものが、作品になる。ということがあります。単なるクオリティアップではなく、アイデア勝負、今までないことにチャレンジして幅を広げることは、自分だけでなく作品を見る人も新たな驚きにつながりきっと楽しいはずです。同じことを繰り返していると、最初は居心地が良くても新しい人は入ってこず、そのうち誰も居なくなります。いつまでも古びず新しくあるためには、絶え間ないチャレンジが一番です。


「邂逅~めぐりあい~」
高感度性能の向上により、より短いシャッター速度で星が撮影できるので、長めの焦点距離のレンズでも作品にすることができた。一枚撮り。

https://www.youtube.com/embed/mEfNoa_7vp8

「第4回 野辺山観測所・星空撮影会 6k 360度VRタイムラプス」
野辺山観測所・星空撮影会での体験を共有したくて作成。できればyoutubeに飛んで、5kあるいは4kで見てください。oculusなどのVRデバイスか、ドームなどで見ていただくと迫力満点!?

もっといろいろチャレンジして、もっといろいろ楽しもう。アドバイスや厳しい意見もお待ちしています。

<プロフィール>
著者:石原大稔(いしはらだいとし)
ハンドルネーム:だいとしぃ
神奈川県在住。オリンパスアンバサダー。自由ヶ丘写真教室講師
グループ写真展 天の光地の灯 2018参加メンバー
グループ写真展:「星々の集い2019」~わたしの一枚~ 2019年8月6日(火)~8月11日(日)12時~21時まで(最終日のみ17時まで)平日夜イベント、土日ギャラリートーク有り
Webサイト:https://daitoshi.com/
Facebook:@artist.daitoshi.ishihara
Instagram:@daitoshii