長野県、北信濃志賀高原の麓に住んでいる佐々木正明と申します。星空への興味関心は幼いことからありましたが星景写真を始めたのは定年退職後で10年ほどの経験です。今回12月のコラム執筆の依頼をいただき大変光栄なことですのでお引き受けしました。
☆天体写真との出会い
38年間長野県の教員生活の1年目、教育センターでの月の写真撮影の研修会に参加したのが天体写真のスタートです。当時はインターネットもなく情報はもっぱら書籍でした。特に藤井旭先生の著書が非常に魅力的でした。
最初の星景写真といえるものは2校目の山間地の分校の庭で撮影したウエスト彗星です。1976年3月5日早朝に東の空から現れ北の空に大きく長く尾を延ばしたウエスト彗星は感動的でした。タカハシ製作所のP型赤道儀でガイド撮影した白黒銀塩写真ではネガを紛失してしまいプリントしか残っていません。
それから21年後、北アルプスを望む山間地の学校に勤務していた1997年の4月にはヘールボップ彗星が現れました。北アルプス鹿島槍ヶ岳上空に見えた彗星の美しさも忘れることができません。大きな彗星が現れるときに光害のない山間地の学校に勤務していたことは幸運としか言いようのがないものとなりました。さらに2001年11月のしし座流星雨のときも諏訪地方の山間地学校に勤務していたことも私の運は尽きていませんでいた。
☆退職記念にデジタル一眼レフカメラを購入
2010年3月に38年間の教員生活に定年で終止符を打ち、記念にと憧れだったデジタル一眼レフカメラEOS7Dを購入しました。レンズはリーズナブルな広角レンズをつけて星空を撮影し始めました。星空を撮影している知人もなく情報はもっぱら書籍、試行錯誤の連続でした。一番苦労したのはピント合わせです。ルーペ使って液晶画面で合わせるのですがピントが合っていない写真を量産した苦い思い出ばかりです。
その後ご多分に漏れず機材沼にはまり込み改造カメラ、評判のいいレンズ、フィルターなどを手に入れ、さらにフォトショップを始め天体写真関係フリーソフトも導入して天体写真沼に浸かっています。
☆志賀高原ロマン美術館星景写真展で刺激を受ける
2013年NHK長野放送局で「星空プロジェクト」というプロジェクトが開始されました。このプロジェクトに大きく関与されていたのが日本星景写真協会ASPJの重鎮である国立長野工専教授大西浩次先生でした。私は当時ロマン美術館の運営にも関与していたこともあり、志賀高原をはじめとする長野県の星景写真を志賀高原ロマン美術館で展示したいと大西先生にコンタクトを取りました。大西先生のご快諾をいただいて2014年11月から12月に「時空の回廊 大西浩次星景写真展」を開催できました。大西先生のスケールの大きな作品に触れて星景写真への熱がますます高まってきました。
そんな刺激を受けて星空プロジェクトに応募した写真がテレビ放映され、さらに星空プロジェクト写真展にも展示されたことも大きな励みにもなりました。
☆マイフィールドは志賀高原・・天の川を求めて
私は志賀高原で星景写真を撮影することがほとんどです。自宅と同じ町内(山ノ内町)にある志賀高原へは車で30分ほど移動すれば満天の星と出会えます。さらに少し足を延ばして横手山、渋峠までは自宅から40分程度ですのでSCWやGPVを見て急に決断することができます。横手山や渋峠は11月から冬期間通行止めになるので夏が中心になりますが2100mのドライブイン駐車場の夏の天の川は「雲がかかっているね」と間違えられるほどです。私にとっては志賀高原方面へ行くことはプチ遠征ですが、遠くから3時間近くかけて見えられる方も多く、この場所で知り合ったFB友達も私の宝にもなっています。
コロナ禍の前、横手山ドライブインの駐車場には星空撮影に遠くから多くの星空ファンが集まります。特にペルセウス座流星群の8月は星空撮影のカメラマンだけでなく観光客にみなさんで賑わいました。
2020年7月、久しぶりの肉眼彗星ネオワイズ彗星が話題になっていました。7月19日もしかしたら晴れるかもしれないと、横手山ドライブインまでプチ遠征しました。到着したときは雲が広がり期待ができないと思っていましたが、幸運にも雲が30分間ほど切れてネオワイズ彗星が姿を現しました。
天の川アーチをいつか撮ってみたいと思っていましたが、その方法がよくわかりませんでした。昨年、画像処理ソフトをつかってやっと天の川アーチ画像を作ることができました。
☆数少ない遠征も長野県内・・
いままで長距離遠征は、野辺山、開田高原、富士見町入笠山、霧ヶ峰の4か所しかありません。いずれも県内で間に合っていますが、それだけ長野県には星空が美しいという事でしょうか?信州の星空を目当てに遠距離遠征でおいでの方が多いのも頷けます。
野辺山天文台での第一回星空撮影会に運良く参加できました。雲が広がっていた空が撮影開始時刻になると噓のように星空が見えてきてパラボラアンテナを前景にし感動しながら星景写真撮影思う存分楽しみました。
2018年8月2日富士見町入笠山マナスル山荘新館に宿泊して思う存分星空を楽しみました。オーナーにドーム内を見せていただき大きく輝く火星も望遠鏡でのぞかせていただきました。
☆第二のマイフィールド・・近間の河川敷
北信濃の冬は雪雲が垂れて快晴の夜はあまりありません。また志賀高原横手山へは志賀草津ルート冬期間通行止めで行くことができなくなります。そんな冬期間はもっぱら近くの河川敷や里山、自宅の庭がマイフィールドになります。
近くの山際に樹齢200年と言われているしだれ桜があります。満開の桜と天の川が故郷を見守ってくれているように見えました。
北信濃は豪雪地帯です。雪雲が星空を隠してしまう日も多いのですが、雪がやんで晴れ上がった空には冬の星座が輝きます。
☆星空の魅力を伝えたい
標高が高く天文施設もたくさんある事から「長野県は宇宙県」を標榜し様々な取り組みをしています。志賀高原はユネスコエコパークに認定され、生態系の保全と持続可能な利活用の調和(自然と人間社会の共生)を目的に行政や民間が連携して活動しています。直接深い活動には参画していませんが少しでも、「ふるさと山ノ内町」「志賀高原」の自然環境のすばらしさを町民の皆さんや特に子どもたちには伝えていきたいと思っています。学校や公民館活動での星の観察案内や文化祭での写真展示など、つたない活動ですが続けていきたいと思っています。
著者 佐々木正明(ささきまさあき)日本星景写真協会会友 長野県山ノ内町在住
星景写真部などの複数FBで星空写真を投稿(masaaki sasaki)
まめパパのひとり言【http://mamepapa-hitorigoto.blogspot.com/