【準備編】
2022年1月、長野で星仲間が集まることになり、私がホスト役となりました。
メンバーは6人。いずれも星景の大先輩ばかり。関東から池田晶子さん、今井多佳子さん、オーロラ写真家の田中雅美さん、そして北海道から横山明日香さんとご友人の平井諭さん。平井さんは写真をとらないので観望も視野に入れたいところ。
幸い長野県は天文関係の施設も多く、平井さんも楽しめるよう、どこか天文台の見学を入れたいと思っていました。星景、観望、天文台とすべてが楽しめるところとして八ヶ岳と木曽が候補になりましたが、八ヶ岳エリアはスキー場のナイター照明が多く星景には不向きかなと木曽を選びました。後は自炊ができ、悪天候時気兼ねなく騒げるところとしてコテージを選択。平日で空きがあるとのことで二棟お借りすることができました。
天文台は地元の星の会でいつもお世話になっている東京大学の木曽観測所に団体見学を申し込みました。冬季は積雪のため一般公開はしていませんが、団体見学は随時受け入れているので助かります。
【新年お楽しみ会---初日】
お楽しみ会初日。昼間は晴れていましたが予報は思わしくありません。
3時頃北海道組が合流。
折しも1/9に内合(太陽-金星-地球の順に一直線に並ぶこと)を控えて金星が非常に細くなっていて、平井さんがはまっているとのこと。すぐ望遠鏡を組み立てて観望しようということになりました。長野への道中だった前日も見ていたようです。
雲がひっきりなしに通り過ぎて悪条件ではありましたが何とか導入に成功、見せていただきました。本当に糸のように細い金星が青空にぽっかり浮かんでいてカスプの離角は180度を超えているように思えました(カスプ:惑星や衛星の明部の先端。三日月でいえば尖っている部分。中心と2つのカスプがなす角は、月ではほぼ180°ですが大気が厚い金星は大気層が光って見えるため180°を大きく超えることがあります。内合では1周することも!)。
写真を撮ろうとカメラを取り付けたところで惜しくも雲に阻まれ、残念ながらそのまま撤収となりました。
日も沈んであたりが暗くなり始めたころ、関東の三人が無事合流。天候は思わしくなく、早めに見切りをつけて宴会モードへ突入。今日の目玉はなんといっても田中さんが自ら打ってくれたうどん。なんと田中さん、以前はうどん屋さんをされていて、武蔵野うどんのお店でもちろん手打ち。安くてボリュームたっぷりで大繁盛されたとか。
汁は池田さんが担当、熱い汁に水で締めた麺を戴くのが武蔵野流のようです。
今井さんが漬けてくれたピクルスを副菜に心行くまで堪能しました。
宴会中(平井氏撮影 私はうどんに集中。声掛けに気づきませんでした。)
食事の後はみんなで酒盛り。田中さんの面白い話を聞きながら夜は更けていきます。。。
【新年お楽しみ会---二日目その1】
遅い朝食を取った後、昨日撮りそびれた金星に再チャレンジ。朝から晴天で期待を以て挑みましたがいよいよ金星が太陽に近づき、時間も限られていたので太陽を見たところで断念、気を取り直して木曽観測所に向かいます。
太陽観望中(特殊フィルターを使って減光しています。よい子はマネしないように。危険です。)
東京大学木曽観測所---
1974年の開所以来今もなお天文学の最前線で活躍している天文台です。2019年からはトモエゴゼンと名付けられた超高感度カメラを武器に露光時間1秒以下という超高速度撮影で天体観測を行っています。2時間ほどで空をくまなく走査できる性能を生かして突発事象の観測に利用されています。
観測所に到着すると副所長の青木さんが出迎えてくれました。建物を一通り案内いただいた後、いよいよドームへ。
平井さん、ここにきて嬉しそうに目をキラキラさせながら見入っています。
青木さんによるシュミット望遠鏡のデモ動作の後点検ハッチを開けていただき、生トモエゴゼンを写真に収めていました。喜んでいただけたようで私もほっと一安心。
トモエゴゼンに興奮中の平井さん。背後にはセンサーが見えています。
【新年お楽しみ会---二日目その2】
宿に戻り、早めの夕食を撮った後はお待ちかねの星空です。昼間から天気は良好、透明度もまずまずでした。宿からほど近い牧場へ行き、月明りの中撮影を開始。皆思い思いの場所で撮影を開始。今井さんは長秒をしかけながらもう一台で色々撮っていました。池田さんと横山さんは二人で仲良く記念写真。次は全員で。
田中さんは御岳に沈む月を長玉で狙っています。月が沈み月狙い部隊の撮影がひと段落したところでもう一つの目玉スポットへ移動。
今回北海道からお見えになるということで、どうしても見てもらいたいものがありました。
それはもちろんカノープス。長野でもなかなか条件が厳しく見るチャンスはそう多くはないのですが、数少ない適地があるので低空がクリアであることを願いながら現地へと向かいました。
ドキドキしながら現地へ到着。開けている南南西へと目を向けます・・・いました!
それはとてもほのかな明かりでしたが、それでも今までみた中では最高の見え方でした。
時間にして30分か小一時間ほどでしょうか、南の稜線に没するまで肉眼のほか双眼鏡でもカノープスの姿を楽しむことができました。一番の希望を最高の形で実現でき、ほっと胸をなでおろしました。
カノープスを見終わり牧場へ戻りましたが、関東の三人が宿へと引き上げ。残りは望遠鏡で観望を続けました。オリオンの燃える木星雲を観望していると後ろから、「荒さんじゃないですか?」と声が。振り返ると愛知の方でよくお会いするWさんでした。星景の名手でよく雑誌にも投稿されています。
「ほんとによく会いますねぇ。よろしかったらいかがですか?」
「それではお言葉に甘えて、、、」
しばし一緒に観望をして、また撮影へと戻っていきました。現地で星仲間と期せずしてお会いできると嬉しくなります。
1時過ぎに観望を終え撤収。宿に戻ると田中さんがまだ起きていたので3時ころまでマニアックなカメラ談義。好きなもの同士、話題は尽きません。
【新年お楽しみ会---最終日】
昨晩は快晴だったのでずいぶんと冷え込んだようで、気温は-20℃を切ったと宿のご主人が教えてくださいました。森の中ではダイヤモンドダストでしょうか、結晶が朝日に輝いてキラキラと舞っています。
会計を済ませ伊那で食事をしてから解散ということになり、楽しい思い出をくれた宿を出発。
開田から木曽に抜けるトンネルの手前にきれいな霧氷が!
駐車帯に止めてしばし最後の撮影会。
伊那市に入りレストランで食事。
旅の思い出を語り合いながら最後はオーロラの話へ。
コロナが明けたら行きたいねぇ。
またみんなで集まりましょうね。
再会を誓いながらそれぞれの地へと帰っていくのでした。
著者:荒 隆(あら たかし)
長野県伊那市在住 日本星景写真家協会 会友
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