暑中(残暑)お見舞い申し上げます。とは言え、秋が深まるにつれだんだん観月の季節になってきます。そんな季節に月を撮る参考になれば幸いです。
今回は月の撮り方のコラムを2018年4月号に執筆させていただきましたが、今回はその続編になります。
■月を撮るレンズ
画角の中に比較的大きく月を入れたいとなると必要なレンズは一般的に超望遠レンズと呼ばれるシロモノが必要になります。
400mm
600mm
1000mm
1500mm
どうでしょう。400mmだと風景主体、焦点距離が長くなるに従い月が主役になってきます。
撮影意図との金合わせで焦点距離が決まってきますがいずれにしてもいわゆる長玉が必要になります。
■くっきり撮るには
さて、望遠レンズを持っているけど、どうもくっきりと映らない、イメージ通りでない…という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
原因① ミラー・シャッターブレ
三脚はしっかりしたものを使っているのに、ケーブルレリーズも使っているのにシャープさが足りない場合、メカ的なブレ要素が悪さしている場合が多いです。レフ機ではミラーアップしたとて、シャッター幕を走らせるメカ動作は必要で、超望遠ではそのレベルでもブレが出てしまいます。近年メカ動作無しで撮れるカメラ(特にミラーレス)になってから歩留まりがぐんと上がりました。
原因② 気温によるピントずれ
事前にしっかりピント合わせしたのに、本番でボケボケのパターンはこれが原因かもしれません。
特に、夕方日没とともに上る満月のパターンは、日没とともに急激に温度が下がってゆくため、特にオートフォーカスの超望遠レンズは気温の影響が大きい傾向にあります。月の仰角の浅いこんなシチュエーションだと大気の揺らぎも伴って、オートフォーカスもピントを見失いがちになるため、機械任せにもできません。結果的に、気が付くとピンボケカットを量産している羽目になります。
この問題は、傾向として、オートフォーカスでないシンプルな光学系のほうが有利です。
原因③ ゴーストによる画質低下
カメラメーカーの、特にズームレンズは近距離から遠距離まで画質のバランスがとれるようにレンズ枚数が多くなる傾向にあります。これがレンズ表面の反射を起こし、ゴーストやフレアが発生します。その結果、意図しない画像になることがあります。
■おすすめの機材
いろいろ試してみた結果ですが私のおすすめ機材を紹介します。
ボディ：ミラーレスカメラ(メインの使用機器はNikon D850, Fuji X-T3/X-T5)
レンズ：BORG 90FL , Reflex Nikkor 1000mm F/11
レンズはシンプルでコンパクトな光学系がおすすめです。シンプルであるほど、ゴーストやフレアの影響も減ります。価格もオートフォーカスの超望遠レンズの値段よりずいぶんお手頃です。
雲台ですが、フルード雲台、ギヤ雲台を使っています。
月はゆっくりと移動してゆきますので、3way雲台よりは使い勝手が良いです。
ちなみに、ギヤ雲台はもともと3wayなのですが、1軸取り去って2軸で使っています。
BORG 90FL+フルード雲台
Reflex Nikkor 1000mm F/11+ギヤ雲台
焦点違いで複数機材を使って撮っているので、ちょこちょこ動かすのに楽な雲台が好みです。
赤道儀を使うのもありですが、個人的には設置撤収が面倒なので使っていません。
ピント合わせですが、
- ミラーレスはファインダーで拡大してピント合わせできるのでAF合焦マークや勘より歩留まりが上がります。
- それでもピントを動かすときに像がプルプルして合わせづらいです。私の場合、BORGのピントノブに結束バンドを尻尾を残して巻いてあります。尻尾の部分でピントノブを動かすとブレは結束バンドが吸収してピント合わせが楽になります。
さて、撮影は1時間近く前には現地に入ります。機材の外気温慣らすためと、現地の不測の事態に対処する時間を確保するためです。
撮影は複数台数で臨みます。焦点違いで2台に加え100～400mm(80～400mm)のズームレンズも用意します。
ビーナスベルトがきれいだ、とか、いい感じのところに鳥が飛んできた、というシチュエーションでズームレンズが活躍することがあるため、通常メイン１～2台、押さえでズーム1台、余裕があれば銀塩1台。全部のカメラの面倒を見ることができないときは、10～15秒のインターバル撮影に設定しておき、構図だけ気を付けてブラケット撮影しています。
どうでしょう、いささかマニアックではありますが、参考にしていただけると幸いです。
－プロフィール－
著者：久保田俊雄（くぼたとしお）
長野県在住 日本星景写真協会準会員
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ふと見上げた星空を留めておこうと、ふらりと撮影しています。月に照らされた景色と星空の写真も撮っています。
