2025年12月号「星空撮影は安全第一で!」

雪道でスタック

2016年12月上旬、私は美瑛町へ向かっていた。その日は本州の撮影仲間が現地に赴いており、他に数人の星友も合流予定だった。

札幌から出発して数時間後、21時頃にカーナビの指示のもと一直線の下り坂で有名な「ジェットコースターの路」にさしかかった。
辺りは数センチの積雪。「この先除雪していません」という看板が有ったが通行止めではないし、このまま突っ切れるだろうと思ったのが甘かった。
あと数百メートルで通過できると思った時、積雪が徐々に深くなり完全にスタックしてしまった。何度も前後に動かして脱出を計ったが全く動かない・・・
幸い携帯の電波は有ったのでJAFに電話したが、到着はかなり時間がかかるとのこと。動かなくなった車の中で、私は途方に暮れた。

救助が来るまでやることがないので、とりあえず機材を出して撮影開始。
スタックしてしまった当時の愛車クルーガー。
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今までで一番不安な気持ちで撮影したオリオン座だった。
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やがてJAFが到着したが、その車両も埋まる危険性があり除雪しながら慎重に救助していただいた。担当のお兄さんが神様に見えた。
パトカーの誘導で脱出した頃には、日付が変わっていた。カーナビの過信には気をつけよう。

ほっとして空を見上げると満天の星。夜はまだ長い。そのまま帰るのももったいなかったので、マイルドセブンの丘に向かった。
現地に到着して路肩に停車しようと思ったが、あろうことか側溝にはまってしまい再び一人では脱出できない状況に陥ってしまった。
一晩で二度もJAFへ連絡をすることになろうとは。そこへやって来られたのが先ほど助けていただいた同じ方で半分呆れられていたと思うが、私は再び神々しい御姿を拝見した。
その後撮影したのがこの写真。
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とても晴れやかな気持ちで撮影したオリオン座だった。
ちなみに今はこの木々の多くは伐採されていて、もうこの光景は見られない。

鹿と衝突

それから1年半が経過した2018年5月下旬、撮影のため私は富良野に向かっていた。
快調に車を運転していたその時、急に何かが目の前に飛び出してきた。立派な角が生えた巨大なエゾシカだ!
人間が本当に驚いた時は声も出なくなってしまう。裏返ったような「ぁっ」という声を出すのが精一杯だった。

車は派手に損傷したが、動かせないわけではない。
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そのまま予定通り現地まで走らせ、撮影したのがこの写真。
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しかし車から異音が出ていて危険を感じたので、数枚撮影しただけで150km先の自宅へ戻った。

その後修理の見積もりをしたが、100万円近くかかるとのことなので我が愛車クルーガーは廃車することになってしまった。
次の車にはこれを付けることにしたが、その効果は如何ほどかは不明。
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北海道内の撮影仲間も鹿と衝突した経験がある方が非常に多い。熊との衝突はまだ聞いたことがないが、これから増えるかも知れない。
私の場合は幸いにして怪我はなかったが、下手をすると車だけではなく命の危険もあるので十分にご注意を!

つい先日も

そして2025年10月、支笏湖に今話題のレモン彗星を撮影しに行った。
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ネオワイズ彗星や紫金山・アトラス彗星のような大彗星ではないが、テイルがとても美しい彗星だった。
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ひととおり撮影し終え、帰路に着く。
そしてまたもや私は「ぁっ」という声にならない声をあげてしまった。
ここはエゾシカの多発地帯であることを失念し、すっかり油断してしまっていたのだ。

<以下略>

今となっては良い思い出

こんな活動を続けていると、他にも細かいトラブルには事欠かない。

現地の方に不審者と疑われた時の星空
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沼地に靴がはまって靴下まで泥だらけになりながら撮った星空
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氷板を踏んでズルッと転倒したが機材は身を挺して守った時の星空
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強風で三脚が倒れレンズを破損させた時の星空
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急な腹痛に襲われ悶絶した後に撮った星空
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など、写真を見返す度に色々な事が思い出される。

不可抗力な場合も多いが、夜間は思わぬトラブルに遭遇する可能性が昼間より高くなる。
皆さんも細心の注意を払って楽しい星景ライフを!

著者:西澤 政芳(にしざわ まさよし)
2000年代後半から北海道内で星景写真、天体写真を撮影。
2025年8月、個展開催。
札幌市在住
日本星景写真協会会員
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プロフィール