2016年7月号「移動時間は短く、撮影時間は長く」

撮影地に向かう道すがら車窓から見える景色は、日常生活とは少し異なる時間の流れを味わうことができます。その撮影地の食材、そしてその土地に住む人達との出会いをのんびりとした時間の中で楽しむ事は、精神衛生上とても良い事です。しかし自分の場合は、目的地に早く到着して速やかにフィルムカメラの準備をし、フィルム撮影を開始したらおもむろにカメラバックからデジタルカメラを取り出し撮影を開始します。

このデジタルカメラの時代にフィルムカメラで撮影するの!と思われる方もいるのかもしれませんが、しかし素敵な星景写真がフィルムカメラで写せるのです。

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近年、撮影の名所は右を見ても左を見てもデジタルカメラがずらりと並ぶ様になったこの時代に、星景写真をフィルムカメラで撮影し始めたのはここ数年のこと。一応35mmフィルムで昼間の風景写真は時々写していたのですが、ブローニータイプのカメラを購入していきなり暗闇で撮影するには多くの戸惑いもあり、日本星景写真協会の方々にアドバイスを頂きながら始めました。

さらに最近はフィルムの種類も少なくなり、冷凍庫に保存してあるフィルムISO100、200、400を使用する分だけ解凍してから、数本のフィルムをカメラバックに入れて撮影に出かけています。

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フィルムカメラでの撮影の場合は、撮影地、月の大きさなどの条件を考えながら、カメラ用ベストのポケットに常時入れてある撮影用メモノートを取り出して、年月日、撮影地、月の大きさ、フィルムの種類、感度、設定した露光時間、露光開始時間を記載し撮影を開始します。

この撮影開始の準備をするのに時間が長くかかるので、やはり途中の道のりを短時間に済ませたくなってしまうのはせっかちな自分の性格かもしれません。

memo01 上記のメモノート表に出来るだけ正確なデーターを記載し、後日出来上がったフィルムの出来栄えと過去のデーターを照らし合わせ、新たに適正と思われるデーターを下記の表に書き足し作成し直します。

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撮影開始からフィルムの出来栄えを見て表にデーターを新たに記載する、この繰り返しの手順を踏みフィルム写真の完成度を高めるこの一連の流れが、自分にとってのフィルム写真撮影の楽しさなのかもしれません。

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これからも冷凍庫に保管されているフィルムが底尽きるまで、移動時間は俊足にて短く、そしてフィルム準備完了までの手間のかかる準備時間と長い撮影時間を楽しみたいと思います。

著者:杉 大介(すぎ だいすけ)

名古屋市在住 日本星景写真協会 準会員

小学生の頃は家の庭先で、中学生の時はキャンプ場で見た夏の夜空を流れる様な天の川をこの長い年月見ることもなく日々を過ごしてきました。8年前に乗鞍岳で日本星景写真協会の方と出会い星景写真を知り、その日の夜の満天の星空に魅了され少しずつではありますが季節の星座を見つけることが出来るようになりました。