2021年11月号「SNSが繋いだ星景写真」

コロナ禍が続く中で星景写真の先達の訃報に接し、信じられない、残念、淋しい気持ちでいっぱいです。前会長竹下育男さん、モスッチこと鈴木祐二郎さんのご冥福を謹んでお祈りいたします。

振り返ると10年

ASPJに入会して10年になろうとしています。風景写真を撮りながらSNS「ガンレフ」を始めたことで星景写真を目にするようになりました、SNSを通しての交流で星景写真への興味が深まり、当協会の第2回巡回写真展「星の風景」が入会の決め手となったのです。クリスタルプリント仕上げの五十数点の星景写真は美しくドラマチックで魅了されてしまいました。私もこんな写真が撮れるだろうか、こんな写真が撮りたいとの思いで星景写真を始めたのです。

「桜島の噴火」2013-1-16

入会した年末にMoonlight Photography・竹之内さんに案内してもらった桜島、入会当初からこんな凄い写真が撮れて喜びもひとしおでした。これで深みに嵌ったかも。

ブログやSNSで学ぶ

当初は何も分からずSNSやブログ等で撮影ノウハウを学びました。実際に撮影現場でも手解きを受けたりもしました。一番参考にしたブログは星景写真家・前田徳彦さんの「星空のある風景写真BLOG ~眠りたくない夜がある~」です。星景撮影に関するノウハウ(機材・設定・現像)が満載で多くの事を学ばせて頂きました。

「星空ハンター」2016-3-5

前田さんとご一緒した阿蘇草千里、この撮影行で師匠の撮影モニターを見てビックリ、こんなに明るく撮るのだと実感しました。

そして、毎日閲覧するFacebookは「星景写真部」です。星景写真に特化したグループでタイムラプスをメインに撮られているSpitzchuこと小林幹也さんが運営されています。このグループは星景写真を投稿する場ですが、星景に関する事であれば質問やアドバイスを求めることができる点が特徴です。また、タイムリーな課題や時々のまとめ星景作品投稿の提起、はたまた、小林さんのご尽力で東京銀座にてFacebook「星景写真部」のグループ写真展等も開催、ギャラリートークや懇親会を通して会員同士がリアルに親交を深めることが出来ました。SNSと実際の交流、両刀で運営されている点が素晴らしい。

「棚田の宙」2018-5-11

毎年、田植えの時期は星々のリフレクションが楽しみです。この作品で星ナビデビューが出来ました。

皆さんの投稿作品に添えられたコメントの中には、知らなかったことや創意工夫されている撮影法が垣間見れて有意義です。新星景の投稿作品ではアート的なエッジの立ったものから、自然な仕上がりで一枚撮りと判別できない作品も有ります。それぞれが自分の、お好みの作品仕上げです。

新星景は合成ですが、撮影した時間帯の地上景と夜空に、嘘が無ければ問題ないと思っています。実際に撮影地で見る星空のある風景は、完成作品とは異なり漆黒の暗闇の広がる無彩色の地上と夜空に彩のある星々が無数に光り輝いている風景です。撮影する星景写真自体が一枚撮りであってもカメラならではの世界であり、自らがイメージして作り上げた作品に他ならないからです。

「木星と土星のランデブー」20-12-25

同じ構図の写真ですが左側はレンズの前で空部分にソフトフィルターをヒラヒラさせて星をぼかしてます。右はフィルター無しです。ハーフフィルター効果で空はぼけて島はクッキリです。この方法もSNSのコメントを参考に実施しました

私が星景写真を撮れるようになったのも撮り続けているのもSNSの向こうにいる皆さんのお陰です。もっと綺麗な魅力的な星景写真が撮れるように、また難しい現像スキルもアップして行きたいと思っています。コロナが落ち着いたら遠征撮影にも行きたいのですが、寄る年波に体力の衰えを感じています。老けるには早すぎるをモットーに撮影を続けています。

「カノープスが見えたよ」2021-2-19

カノープスの撮影は写友に教えてもらった、いつもの撮影ポイントに通っていました。が、恥ずかしい話、わが町でもカノープスが見えていたのです。

コロナ禍での星景撮影

季節の移ろいの中で天の川、夏のサソリや冬のオリオンを配した撮影は星景写真の王道です。新型コロナウィルス感染拡大以来、緊急事態宣言やマンボウの発出で遠征もままならい状況が続いています。今週末は晴れ予報なのに撮りに行けないもどかしさ、自粛生活を余儀なくされてストレスが溜まっていることでしょう。そんな時は、天の川は見えないけれど身近に広がっている夜空、宵の口や明け方の天文現象などの撮影はいかがでしょうか。主な天文現象については、国立天文台のHPやアストロアーツの星空ガイドで簡単に確認できます。従って、撮影計画も立てやすく撮影自体も1~2時間程度の短時間です。問題は身近な撮影ポイントの選定です。前もってグーグルマップで下調べしておくと良いです。地上景に目を引くような効果的な景色がある場所だと更に良いです。

 左「月と金星と水星のランデブー」20-5-24 残照の夕焼けの中に細い月と木星と水星
右「一番星」宵の明星 21-7-26 トワイライトの夕暮れに金星の輝き

星空のある風景=星景写真は地上風景が主役だと思っています。素敵な地上景があって夜空に輝く星々がある。夜空で輝く星々が地上景に花を添えて魅力が生まれるのではないでしょうか。星空が主役になるのは彗星や流星、ロッケトの発射、迫力ある天の川など星空に変化が有る時だと思います。

撮影場所が決まったら撮影するわけですが、宵の口や明け方に撮影する機会が多いと思います。その様な薄暗い薄明の時間帯は地平線や水平線の周辺に彩が残り美しいです。主に惑星や月とのランデブーが多いのですが、日本人のわびさびにも通じる「ぽつんと星景写真」、お勧めです。

ISSの撮影も同様でJAXAのHPの「きぼうを見よう」を参考に撮影しましょう。動けないなら動かずに撮れるものを撮って楽しむ、(どこかで聴いたような言葉)これにつきます。

コロナ禍が落ち着き以前のような普段の生活に戻り、また皆で集まってワイワイガヤガヤ楽しい時間を共有できることを願っています。

「なごり雪」2018-3-23

三月のなごり雪の夜空に夏の天の川が昇ってきました。

付記

風景写真好きの愛読書、隔月間風景写真の本年7月―8月号に日本を代表する2名の風景写真家が手掛けた星景写真の作品が掲載されていました。近年は星景写真の掲載が増えているように感じていて、これは風景写真の一つの分野として認知された証左だと嬉しく思いました。

著者 :松本 篤(まつもと あつし)
福岡県宗像市在住 日本星景写真協会 会友
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