2015年10月号「巷のライトアップについて」

今年の春、とあるベンチャー企業の東京オリンピックに向けた「富士山ライトアップ計画」がちょっとした騒動になりました。また程なくして、「鳥取砂丘光のアートフェア2015」の目玉企画である高さ7千メートルの光のタワー構想が公表されました。どちらも批判が殺到し、中止となりました。

近頃、村おこしやイベントなどで、どこへいってもライトアップが氾濫していますが、今回の騒動は、そんな風潮を見つめ直すいい機会になったのではないかと思っています。

本来暗いはずの夜を照明で明るくする行為は、多くの人が思っている以上に動植物をはじめ、様々な環境に悪影響をもたらすため、「光害」という公害に認定されています。

その影響の広がりに一定の歯止めをかけるため、環境省の「光害対策ガイドライン」というのがあります。このガイドラインは、国立公園とか関係なく、都市部も含めた全ての環境に対するガイドラインです。環境照明は4類型に分類され、富士山の大部分は最も厳しい「環境照明I」にあたります。

「環境照明I」に分類されている場所は、たとえ「あんしん」のための照明器具であっても、上方光束(水平より上に漏れる光)を0%にするよう推奨されています。また、ライトアップのような「たのしみ」のための照明器具については、「環境照明I・II」は適用対象から除外されています。(ガイドラインP18、P24、P25)
つまり、照明の設置自体をしないよう求めているということです。

富士山はもちろん、北海道の青い池、滝などの自然景観は「環境照明I」に属します。そして、毎年全国のあちこちで催される桜のライトアップも、ほとんどが「環境照明I」か「環境照明II」に属することでしょう。

これが国立公園の特別地域か特別保護地区であれば、照明設置に環境省の許可が必要で、よほどの理由がない限り許可されないことでしょう。普通区域なら届出のみとなりますが、それでもライトアップは上方光束そのものなので、指導が入って実現が難しいと思われます。

一方、国立公園内でなければ許可の必要はありませんが、ガイドラインには明確に反した行為です。自然を売りにする行為そのものは悪いとは思いませんし、私自身もその恩恵をたくさん得ている人間のひとりです。

ただ、ライトアップによって自然環境を少なからず破壊しているのだということを知っていただきたい。そして、自然を売りにするならなおのこと、ライトアップはやめるべきではないでしょうか。

■光害に霞む阿蘇連峰
Daikanho3_1200

関連リンク:秋の夜長にダークスカイ・トーク

著者:竹之内貴裕(たけのうち たかひろ)
長崎市在住 日本星景写真協会理事
「惑星地球」をテーマに、地球も一つの星であることを体感できる写真を目指して活動しています。
http://www.moonlight.agency/

コメント

  1. Trudy より:

    You mean I don’t have to pay for expert advice like this anyomre?!

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