2016年1月号「定点で星景写真を楽しく写す」

新年明けましておめでとうございます。
皆さまにおかれましてはお健やかに新年をお迎えのこととお慶び申し上げます。新しい年の始まりに際し、本年も協会の皆様と共に事業活動に向けて新たな歩みを重ねていく所存です。この1年が佳き年になるよう心より祈年いたしまして新年のご挨拶とさせていただきます。
本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

定点撮影は一定のポジョンから景観の変化を記録することで、学術的な価値を得たりします。しかし、あまり面白い写真にはなりにくいようです。そこで、一定の場所から夜空の変化で写真を楽しく撮影する方法はないかと探求・記録することが私の撮影方法の道筋となりました。
私の住む新城市は愛知県東部のなだらかな山間の盆地です。写真を始めた頃には普通に見えていた天の川もいまではその姿を消そうとするほど夜空は明るくなってしまいました。
大掛かりな機材を必要とする天体写真から転向し、身近な風物を入れた固定撮影で“星景色”というテーマを唱えて写し始めたのが1991年で今で云う星景写真につながりました。

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月光の潮騒(1995年1月)

愛知県最南部で渥美半島の中ほどに位置する「一色(いっしき)」は自宅から60Kmほどの場所です。風光明媚な海岸で、太平洋に面しているので南の方向が暗く、近郊でも天の川がくっきりと眺められる別天地です。浅瀬の沖に“弥八島”があって、私はこの岩礁の小島にとても魅かれました。
この島を語り部とした定点撮影になったのも必然なことでした。それは、自分が肢体に機能障害を伴う疾病を患う身なので、行動に制約があり撮影地の範囲も狭められているからです。日常生活に大きな支障はありませんが不自由もおおくて、機材の運搬、階段の昇降などが困難で、撮影地でも小さなミゾや丘さえ立ちはだかります。悔しさと情けなさで、写す気力を失いかけたこともありました。
それでも、空を仰げば、場所を選ぶことなく星は巡り、満月は何処にいても昇るのでした。そうした事情から、車を停めた脇で弥八島の見える夜空を写せる一色が私にはとてもありがたい撮影地の一つになりました。

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夏の一色磯(2014年8月)

友人の案内で知ったここの海がひと目で気に入りました。その魅力の一つに雄大な水平線があります。早いもので、もう30年ちかく通っています。当時は釣りに訪れる人が時折いたくらいで深夜に人影は見られませんでした。みごとな星空が広がることも確かですが、夏から秋にかけては内陸の電照温室の灯りが増して空に反映したり、車の往来もあるので露出をかけられない事があります。あまり褒め過ぎてもこれから訪れる人の期待を裏切ることになるのでそこそこにしておきます。
それでも海の景色は気持ち良く、東と西の視界も開けていて、美しい朝日や夕日のポイントでもあるのでカメラマンの姿も多いです。最近では、夜の三脚組の姿を見るのも珍しくないようです。

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弥八島に巡る満月(2010年3月)

“太平洋ロングビーチ”は磯から西に広がる砂浜で、1年を通してサーフィンが盛んな渚です。週末ともなると日が落ちても賑わっています。弥八島に絡めた月の出には、この砂浜側に移動して狙いを付けます。ポイントとなる島を活かして、いかにバリエーションを生み出すか。思案するもイメージが浮かべばあとは時を待つのみ。夜空には絶える事の無い星と月の巡りがあるからです。
私が飽きずに長く通えるのも、意に反する天候と一期一会の連続だからです。変化のある前景でのアプローチに憧れもしますが、思い入れのある島を中心に、変わるものと変わらないものの対比が鮮やかに展開する夜空の楽しい定点撮影。
冬の晴天率も高く、過ごしやすい常春の海“一色”でこれからも三脚組の一人に加えていただければ幸いです。

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夜明けのベール(2006年12月)

著者:竹下育男(たけしたいくお)
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ASPJ日本星景写真協会会長
中部天体写真同好会会員

生活圏の中で仰ぎ見る空の美しさと楽しさを探求・記録
している夜空の写真家。“星景色”作品は著作写真集や個
展等で発表を重ねています。(愛知県在住)
天空星景色
http://www.takeshitaikuo.com/
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