2016年8月号 「星景写真は一期一会」

風景写真を収める上で、昼でも夜でも一期一会を写したいとお考えの方は多いと思いますが、取り分け星景写真はその要素を事前に予測しやすく、計画的に二度と出会えない場面を狙うことが可能だと思います。今回はそのために私が普段意識している大きな要素についてピックアップしていきたいと思います。

(1)撮影時間

基本的なことですが、月日と時間により夜空に浮かぶ星座は異なります。撮影に出かける前に、シミュレーションソフトでどの時間にどの星座がどの辺りにあるかを調べていくとよいでしょう。最近はスマホのアプリでも簡単にできますね。現地で実際の風景を見ながらスマホをかざすことでイメージもしやすくなります。昇る星座、沈む星座を意識すると地上風景と合わせやすいと思います。季節ごとの星座の位置、薄暮・薄明時間を頭に入れておくとシーズンごとの動きも決まっていきます。

1

(2)月齢

景色を浮かび上がらせるために星景写真の撮影には重要な月明かり。これもただ月があればよいというわけではなく、月齢により景色と星の写り方がガラリと変わります。満月の強い光で地上を写し、星々は控えめにしたい。細い月で優しく照らし、星々はしっかりと輝かせたい。それぞれ風景のイメージに合った選択をすることが必要です。その地の空の暗さによっても月齢により星の写り方は千差万別ですので、何度か通うと掴めるでしょう。また、順光で景色を照らすのか、月そのものを構図内に据えて撮影するかによっても随分印象が異なります。

名称未設定 1

(3)前景

星は星座が移り変わりながら夜空に一年中輝いていますが、前景に四季折々の被写体をあしらうことで、前景と背景による季節感のコラボレーションを表現できます。しかし、必ずしも前景と背景の時季を合わせれば良いというわけではなく、あえてずらし季節の移り変わりを表現することも効果的です。春は桜、秋は紅葉など、幸い日本には美しい四季を感じる被写体がたくさんあります。ただし移ろいやすい自然風景であり、月齢や天候のマッチングを考慮すると、思うタイミングで写すには数年計画になることもあるかと思います。

名称未設定 2

(4)惑星の位置

恒星はほぼ位置を変えず夜空を巡りますが、惑星は大きく位置を変えながら巡りますので、その年、その時期ならではの配列を狙うこともできます。また、輝きの強い惑星は写真の中で主役もしくは良いアクセントともなります。とりわけ薄暮・薄明時に輝く惑星はとても美しく目を引く存在です。今年は1月下旬から2月上旬の未明には並ぶ5惑星や、5月頃に見られた火星を含む夏の小三角が話題になりましたね。

名称未設定 3

この他にも様々な要素があります。もちろん、雷雲や流星など、予測しきれないシーンに出会い作品となることもありますが、下準備をした上で偶発的な要素が加わると、更にワンランク上の作品が生まれると思います。ロケハンや経験を積み重ね、一生に一度しか出会えない場面を積極的に狙って撮影に出かけてみてはいかがでしょうか。

著者:内山しおり 日本星景写真協会準会員