2017年6月号「フットワークを活かして」

皆さんは星の撮影に行って曇られたとき、どうしますか?

事前に日程が決まっている場合を除き、晴れる可能性があるから遠征するのだと思います。それでも、どうしても星空は雲の向こうとなってしまうことがあります。

私は、以前は日暮れ前には遠征地に到着し、明るい内に望遠鏡を組み上げ、その場で朝まで星雲星団の撮影をしながら、その傍らで星景写真を撮るというスタイルでした。大きな機材を一旦店開きしてしまうと曇られてしまってもただじっと晴れを待つことしか出来ませんでした。
その後、次第に星景写真の面白さに魅了され、その撮影比率が大きくなり、いつしか星景写真撮影だけの遠征も増えてきました。その結果、当然の如く、遠征スタイルに変化が出てきました。

星景写真撮影の良いところのひとつに、機材の設置、撤収がすぐに出来ることから、移動しながら撮影できる点があります。そう、曇られたら晴れていそうな場所に移動すれば良いのです。もちろん、最初から計画的に移動しながらの撮影も楽しいものです。

◆◆晴れ間を求めて移動◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

移動が簡単にできる星景写真撮影とは言え、やみくもに移動する訳にはいかず晴れそうな場所をしっかりと見定めなければなりません。
昔は星が綺麗に見える様なフィールドにおける情報源はAMラジオ位しかありませんでしたが、今ではかなりの場所でスマホ等により簡単に情報が手に入るようになりました。気象衛星からの雲の画像、GPVによる雲量予測、雨雲レーダー等々。曇られてしまった時には、この先どこに行ったら星空に出会える可能性があるかを検討する材料が揃っているわけです。
もちろん、遠く離れた場所にいる仲間からの情報も有用ですね。

とは言え、移動の決意をするまではいくつもの葛藤があります。もう少し待てば晴れるのではないか。薄明開始までの時間はどれくらいあるか。最高の環境の場所に来ているのだからここを去るのは惜しい。でも、晴れなければどうしようもない、、、、、、
スマホとにらめっこしながら、もんもんとした時間が過ぎたあと、決断の時が来ます。

「移動だ。」

1_mugikusa[長野県麦草峠 2016,10,9]

 八ヶ岳の北側にある蓼科山の中腹で夕方からガスに包まれていました。夜半少し前までは粘ったのですが、さすがに無理そう。知人からの情報によると下界の方が晴れている可能性があり、下山を決断しました。野辺山の東の川上村方面に向かう途中の麦草峠に差し掛かったとき、突然、ガスが切れたかと思ったら目の前に突然オリオン座が現れました。
路肩のスペースに車を滑り込ませ、背後から迫り来るガスが来る前にさっと撮ったものです。
星景写真はすぐに撮影に入ることが出来るので、このようなスピード技が可能です。

2_takizawa[富士山滝沢林道 2016,7,30]

富士山周辺で元々移動撮影をしていましたが、次なる目的地付近が曇っていたため急遽過去の経験を活かし、標高を上げてみることにしました。
さすが独立峰富士山。少し標高を上げただけでガスから抜け出し、下界とは別格の天の川に出会うことが出来ました。

3_yamanaka[山中湖パノラマ台 2011,10,28]

こちらも富士山周辺で移動撮影中に霧から逃れたケース。山中湖畔で湖面に映る富士山と沈むオリオン座を撮ろうとやってきたのですが霧の中。季節にもよりますが山に囲まれた山中湖は霧で満たされることが多いのです。その様なときは湖を見下ろす高台にあるパノラマ台では晴れている可能性大。
湖畔はそのまま素通りし、標高を上げると、案の定、霧にすっぽりと覆われた山中湖の姿があり、その上には冬の星座達が元気に輝いていました。

4_uminokuchi[長野県南牧村海ノ口 2017,4,22]

夜半前には晴天域が西から広がる予報を信じて長野県の八島湿原やその北のエリアで雲に悩まされながらも撮影していました。しかしながら、流れ来る雲、時には星さえ見えない時間が多くなってしまったので、元々予定していた次のポイントの八ヶ岳の野辺山側まで約90km移動したら満天の星に出会うことができました。

星空の見えない状態から移動することで出会えた星空は、いつまで経っても思い出に残る感動のシーンです。

◆◆テーマに沿って複数の撮影地を巡る◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

星景写真を撮影されている多くの皆さんも移動撮影されていると思いますが、単に複数ポイントで前景を変えて撮影すると言うだけでなく、テーマに沿った移動撮影も面白いものです。例えばオリオンの富士山巡りがあります。
オリオン座が富士山から昇り、富士山を飛び越え、富士山に眠る。そう、自分が一晩で富士山の裾野をぐるっと半周移動しながら撮影ポイントを巡るのです。
この様な場合に注意しなければならないのは、事前のタイムスケジュール計画です。各撮影ポイントで何時何分まで滞在するかのリミットを決めておくのです。これを怠るとついつい同じ場所で撮影を続けてしまい、途中で朝の薄明を迎えてしまいます。

5_asagiri[朝霧高原 2015,12,19]

オリオンの富士山巡りのスタートは宵の口の朝霧高原です。この写真はすでに朝霧高原エリアで2か所目のため、オリオンが富士山から離れています。この夜は夜明けまでに7か所で三脚を立てることになりました。第一ポイントから第7ポイントまでの移動距離は約120kmでした。

ところで、撮影に行った後は作品に仕上げてSNSでの発表や雑誌への投稿などをされていると思いますが、私はそれだけでなく臨場感のある遠征記をホームページの形で残すようにしています。
上記の写真のところには日付を記しておきましたので当日の遠征記もご覧ください。どのような一夜を過ごしたかを綴っています。

http://hoshizora.blue.coocan.jp/diary/t_diary.htm

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この遠征記は皆さんに見てもらいたいのはもちろんですが、自分が振り返って読んだときに、その遠征での出来事をリアルに思い出す事ができるとともに、次の遠征先を決める際の参考にもしています。

皆さんもフットワークを活かして星景写真を撮りながら、その記録も残しては如何ですか?

プロフィール

渡部 剛(わたなべ つよし)
神奈川県海老名市在住   日本星景写真協会 準会員
http://hoshizora.blue.coocan.jp/

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移動しても晴れないこともあります。
~雨粒が飛んでくる中、遠くの晴れ間を眺めながら(富士山太郎坊にて)~