2019年12月号「星の随に」

初めて流れ星のある星景写真を撮影できたのは、みずがめ座η流星群の極大の夜でした。この夜から私は星空の虜となりました。

星景写真を撮影することは、言い換えれば星空の下で過ごす時間のことで、私にとって特別な癒しをもたらします。撮影地までドライブしたり、撮影している間地面に寝っ転がって星空を眺めたり、時には望遠鏡で名のある天体を撮ったり、またある時には双眼鏡でどこともなく星を流し見たり、夜食をつまんだり、日が昇ってから仮眠したり、非日常のエキサイティングな体験です。あとで写真を見返してあの日の星空はあんな色だったとか、とても寒かったとか思い起こして、また星を見に行きたくなるのです。

初めて捕らえた流れ星 木が真っ赤なのはちょうど車が通ったからです

その年のペルセウス座流星群

一眼レフカメラを初めて購入してから約4年、星空を撮影し始めて2年が経ち、最近は専ら星空ばかりを撮影しています。飽き性の私が一つの趣味に長く打ち込むのは初めてのことで、自分でも驚くばかりです。2週間も星を見に行かないとそわそわして落ち着かなくなり、出かけずにはいられません。休みの日には相方と二人でレンタカーに機材を詰め込み、行き先は空の気分次第で晴れている場所まで車を走らせます。

星空の見せてくれる表情の中でとりわけ好きなのが流れ星です。いまだに流れ星の正体についてはふんわりとしか理解できていません(笑)が、一回きりの特別感や、写真に撮ったときの色彩・姿、どれをとっても素敵なものです。記憶の中での流れ星はどんどん掠れていってしまいます(なにしろ一瞬なので)が、写真で捕まえた流れ星は鮮やかさを残してくれます。初心者でもこんなにかっこよく撮れるのかと感動したことを覚えています。

雲間からも 薄明の中でも

満月の夜にも

大気光とともに 肉眼では星がぎらついて見えました

月に照らされた紅葉と一緒に

雲に飲まれても撮影し続けた夜

とても流れ星とは思えない色

凍てつく春の薄明

どうしても桜と一緒に捕まえたくて

明るく小さく捕まえた流れ星と機材

気が長い方はぜひ流れ星の捕獲に挑戦してみてください。カメラを固定したら少なくとも1時間は移動せずにひたすらインターバルタイマーで連続撮影します。撮影している方向に流れ星が流れたら移動すれば良いのですが、見逃したり、まったく流れないことも多いので、2~3時間を目途に移動していきます。ずっと同じ方向を撮り続けるので、だんだん2台目のカメラが欲しくなってきます。

同じ夜、北と西に向けたカメラ ふたご座流星群の夜に

私が撮影する際は、主に18mmの単焦点レンズと12mmの対角線魚眼レンズを付けたカメラを使っています。画面が広すぎると星が小さくなってしまうので、魚眼レンズは後ろにソフトフィルターを貼り付けています。それでも魚眼レンズを使うのは冬のダイヤモンドなどの大きなつながりを撮るのが簡単なことと、独特な円弧が気に入っているからです。広角レンズなら20mm前後がおすすめです。星が小さくなりすぎず、星座と前景のバランスも取りやすいと思いますが、これは好みの問題ですね。

焦点距離18mmで撮影 極大日より数日後のみずがめ座η流星群 晴れそうだったので思わず追加遠征

魚眼レンズで撮影 黄道光Xとペルセウス座流星群 やはり薄明の流れ星は一層鮮やか

撮影後に流れ星を探すのも楽しいですよ。明るい流れ星が流れると流星痕が残ることがあります。肉眼で見えることもありますが、連続撮影した写真をみるとだんだん広がっていく様子を確認することができます。

流れ星が画面の中に流れてくれるかは星の気分次第です。きっと星景写真にもう一味、彩りを加えてくれることでしょう。

〈プロフィール〉
著者:楠岡 瑞希(くすおか みずき)
東京都在住 星のソムリエ(R)
美味しそうなガラスとコーティングのレンズが好き。もっと遠征したいので一緒に星見に行って交通費割り勘してくれる仲間を募集中。
Instagram: https://www.instagram.com/mizuiro_kstar