2019年1月号「星月夜の生み出す山岳美を求めて」

新年おめでとうございます。 皆様よき新春をお迎えのこととお慶び申し上げます。
平成最後の本年も日本星景写真協会共々よろしくお願いいたします。

なぜ山へ

長年の夢「星を撮りたい!山の上で見る満天の星の写真を撮りたい!」という思いを胸に抱き続けながらもほぼ写真も山も知らなかった私が、5年前に一念発起して「星を撮るなら山の上で!」の一心でカメラ機材を背負って北アルプスの山々を登り始めました。

現在は槍穂高を中心に北アルプスで山岳造形美を求めて撮影しています。特に星景写真分野では月光が生み出す(写真の本質である)光と影と北アルプスの山々をどう表現するかをテーマの一つとして試行錯誤しながら撮影しています。

登る前に

山に入るのは限られた週末です。 山に行く日程を決めた後は、下記の撮影要素を元にある程度いくつかの撮影パターンをイメージしておきます。実際の山の天気は大変変わりやすいのでその場の天候に応じて臨機応変に撮影したり、待機したり、時には諦めて寝ます。

太陽・月の要素

日の出、日の入り、月の出、月の入り、薄明などの時刻
黄道光、日食、月食、月(新月、上弦、満月、下弦)の光量など

星の構成

惑星、星座、天の川、流星群、彗星の位置など

風景の構成

東西南北の山々や街の位置、ランドマーク(特徴的な木、岩など)
季節 – 新緑、高山植物、紅葉、雪など

撮影時間

星を点として撮るか、線として撮るか
何時から何時まで撮影するか、何時に起きて撮影するか、体力回復のための睡眠時間の確保

自分の入山・撮影予定の天気を1〜2週間前から天気図、高層天気図、山岳天気予報士らの予測コメントなどを確認します。そして最終的に入山するか、悪天候のため断念するか決めます。 入山するときにはその山の天気予報と山行行程に合わせて 登山装備、撮影機材を慎重に選んでパッキングします。

小屋開け 残雪

北アルプスの山々は深い雪のため、10月中旬から早くて4月下旬まで、遅いところは7月中旬まで北アルプスの山小屋は閉まっています。4月末から5月頃、上高地はニリンソウが咲き始め新緑が芽吹くころ雪積もる槍穂高に登り始めます。GW中でも天候が荒れると吹雪になり時には雪崩も起きます。きちんとした冬山装備と冬山岩稜登攀技術を持った人のみが登る時期になります。

最盛期 夏~秋

雪も解け、夏山登山道で多くの登山者が槍穂高を中心とした北アルプスの山々を満喫しています。多くの登山者がいろいろなカメラを携えて山に登っています。最近では夜に山頂や小屋回りで星の写真を撮影している方を多く見かけるようになりました。

小屋締め 初冬

山の紅葉もピークが過ぎる10月から11月初旬は山小屋も閉まり始め閑散とし始める北アルプスの山々。槍穂高の小屋締めの頃には雪も降り積もるため一足早い初冬の星空と雪山を満喫できます。そして北アルプスの山々は来春の小屋開けまで静寂に包まれることになります。

厳冬期

八ヶ岳の山小屋や西穂高岳山荘など厳冬期にも営業している山小屋を拠点に撮影しています。風の強い八ヶ岳の頂上では体感温度-20~-30℃の中、夜中から日の出まで撮影することもあります。

最後に

山に登るのちょっと無理と思っている皆様も多くいらっしゃると思います。登山バスやロープウェイを使って乗鞍岳、立山、千畳敷、美ヶ原など星がたくさん見られる場所はたくさんありますので ぜひ足をお運びいただき満天の星空を見上げていただけたら嬉しいです。

著者:佐藤 雅子 (さとう まさこ)
東京都在住 日本星景写真協会準会員
2019年4月19日~25日に富士フォトギャラリー銀座にて初の個展を開催予定