新型コロナの影響がなお色濃く残るなか皆様いかがお過ごしでしょう?
私を含めASPJ には山岳エリア中心に撮影活動されてる方も多いと思うのですが、今年は登山も撮影もなかなか思うように出来ないかもしれませんね。
私がよく登る南アルプスでも、一部を除いて山小屋休業・林道通行禁止・登山道通行禁止といった措置がとられ、今季この山域での撮影は厳しいかな?と寂しく感じています。
今回はそんな南アルプスでの自身の撮影を少し振り返ってみました。
私が登山を始めた理由が「山で夜の富士山を撮りたい!」だったのですが、昨今「山岳星景」とも呼ばれている諸先輩方の星景作品に触れた事が転機となり、興味は星空へと変わって行きます。星景を撮るなら急峻で美しい山稜の多い北アルプスなどの方が画になるのでしょうが、最初の頃は富士山も星も撮れる南アルプスに入る事が多かったのです。また北アルプスなどに比べると登山者も少な目なのも私には向いてるのかもしれません。
【仙丈ケ岳と蠍座】 春・小仙丈ケ岳
南アルプスで初めて雪山と星空を撮ったのが春の仙丈ケ岳でした。
ある構図で天の川を撮ろうと登ったのですが、テント場からの距離が長かったせいもあり到着が遅れ目的を果たせませんでした。さらに追い打ちをかけるように強風で三脚を倒してしまい、星撮用のレンズが使えなくなるというアクシデントがありました。これはF4のズームレンズで撮影したものです。欲張って持って行ったバケペンはザックの重りに…。
【甲斐駒ケ岳と摩利支天】 春・甲斐駒ケ岳駒津峰付近
こちらは春の甲斐駒ケ岳ですがこの年は残雪が少なく月も明るい夜でしたので、満足のいく撮影は出来ませんでした。星景というより夜景と言った方がいい一枚でしょうか。この写真を撮った頃から「星景写真を撮るならやっぱり北アルプスかな?」と考えるようになった気がします。
【小河内岳避難小屋と天の川】 梅雨・小河内岳 6D改
私のお気に入りの避難小屋です。この時期はまだ避難小屋は無人で登山者もほとんど居ません。貸し切り状態の避難小屋は不気味ですが、外に出て星空に包まれればそんなことも忘れてしまいます。山奥で過ごすこういう時間はとても贅沢に感じます。
【小河内岳避難小屋と富士山】 秋・小河内岳
富士山方面にカメラを向けるとこの様な感じに。富士山と小屋のアンマッチな感じが好きな場所です。
【月暈とオリオンと富士山】 秋・赤石岳
とにかく週末になると天気が崩れた年で、ようやく晴れた貴重な連休でした。その分、登山者が多く宿泊も危ぶまれたくらいでしたが、賑やかな小屋もそれはそれで良かったです。
雲海、月暈、星、富士山…とても素敵な夜だったのですが、実はクイックシューを忘れてしまい「ここまで登ってきたのに!」と痛恨の思いでした。持ってきていたテーピング用テープでカメラを三脚に固定して何とか撮影しました。
【昇るオリオン】 秋・北岳肩ノ小屋
南アルプスで最も登った山です。甲府盆地の光害の影響をかなり受けるので星景撮影にはあまり向かないかもしれませんが、小屋のすぐそばで撮影できるのがとても便利な場所です。
【北岳とおおいぬ座】 晩秋・北岳肩ノ小屋
晩秋・閉山直前の北岳へ登った時の一枚です。小屋は閉鎖されているのでテント泊でしたが冬期避難小屋も使えたようです。レンズヒーターを巻くのが遅かったため、レンズの曇りと格闘しながらの撮影になりました。山で撮影してると手を抜いてしまうことがあるのですが、基本的なことはセオリー通りにやっておかなければいけませんね。
【北岳と冬の星座】 冬・亡魂沢の頭
長い林道歩きと夏とは違うコースを歩く三泊四日の想い出深い登山でした。また多くの面で自分の未熟さを教えられた山行でもありました。
二泊三日で下山するつもりでしたが、どうしても星空を撮りたくてもう一泊。幕営地から時間をかけて登ってきたものの、寒さと足の凍えに30分と耐えられず引き返しました。是非もう一度行ってみたい撮影地です。
【雪の塩見岳と星空】 冬・本谷山
こちらも一人寂しく長い林道を歩くのが堪えます。年末年始なので上に行くと入山者がチラホラ。仮眠のために寝袋にもぐったら寝過ごしてしまい、稜線から昇ってくるオリオンを撮り損ねました。ここでも甲府市街の灯が強くて困りました。
【富士山と昇る蠍座】 冬・烏帽子岳
富士山と星空…こういう景色を見ると「南アルプスやっぱりいいなぁ…」と思ってしまいます。マイナス10℃台でしたが寒く感じた夜でした。寒いとピントを合わせたり構図を決めたりレンズを交換したりといった基本的な作業ですらも億劫になってしまいますが、それを我慢してこそでしょうか。
何だかとりとめのない内容になってしまいましたが、自身の撮影を振り返ってみて気づくこともありました。
とにかく失敗ばかりしてるという事。もっと慎重に緻密に行動・計画するようにしなければと反省です。そして山という非日常の中に身を置いて撮影することがやっぱり好きなんだなぁという事です。これで良い作品が撮れれば言うことないのですが、それは今後の緻密な計画次第という事でしょうか…。
最近は軸足を北アルプスに移しつつありますが、それでもまだまだ南アルプスには行ってみたい場所、撮ってみたい光景があります。新型コロナが終息してまた登れる日が早く来ることを願うばかりです。
コラムらしからぬ内容に最後までお付き合いいただき有難うございました。
著者:谷口 元啓(たにぐち もとひろ)
京都府京都市在住 日本星景写真協会準会員