星景写真という趣味の魅力の一つとして、私は撮影地の風光明媚な景色との出会いがあります。特に狙っていた被写体に巡り合えた瞬間は、その場にいられたこと自体に幸せを感じます。しかし、近頃は撮影のためのロケ地への過酷なアプローチをしたり、無理な徹夜をしたりすることができなくなっています。撮影地の美味しい空気で深呼吸して、撮影後には地元の美味しいものを食したり、その地の温泉につかるなどしたりして、この趣味を長く続けたいと思っています。
もし、普段使いのスマートフォン(以下、スマホ)で簡単に星空が撮れたら、もっと身軽で手軽な趣味として長く楽しみ続けられるのではと、この「スマホで撮る星景写真」に緩く取り組んでいます。
手元にあるスマホiPhoneで星景撮影
2019年に発売されたGoogle Pixel4で星空が撮れると話題になりました。それを受けて、友人が「スマホで星空を撮る」という天文誌の執筆依頼を受けました。その資料となる画像を得る撮影に同行しました。当時は、Android系のスマホで撮れると話題になっていたので、撮影するスマホは、Android系です。どの画質もスマホのモニターで見る限りとてもよく写っていました。
当時、私はiPhoneを使用していたので、iPhoneではどんな写りをするのかとても興味をもちました。そこで、新たに登場するiPhone13proを購入して挑戦することにしました。
iPhone には、30秒という長時間撮影できるナイトモードがあります。まず、このナイトモードで星空が写るように設定をします。デジカメでの撮影の傍らにスマホで星空のある風景の撮影にチャレンジしてみました。ところが、iPhoneを星空に向けてもなかなかピントが合いません。いろいろ試したところ、スマホケースを外して撮影すると、オートフォーカスが効いて星空を写すことができました。しかし、ピントが合っても天の川などの星が分解しなくて、バックの星空もモヤっとした感じです。スマホのモニターでのちょっと見では問題はないのですが、デジカメで撮りなれた私は、普段使いのiPhoneで星空撮影ができないものと諦めてしまいました。
ピントが合わないのはどうして!? (iPhone13Pro)
スマホカバーを外したらなぜかピントが合いました♡(iPhone13Pro)
よく写った冬の天の川も雲のよう!! (iPhone13Pro)
Google Pixel との出会い
辛口でも的確な評価をするという当会準会員の方が、予てから星空が綺麗に撮れると話していたGoogle Pixel4に、廉価版のGoogle Pixel4aが出るということを知りました。そこで、さっそく発売を待って購入することにしました。Google Pixel4aで撮ると、あっと驚き、天の川の星々も分解して、バックの空のノイズのない滑らかな写りです。デジカメの画質には及ばないものの、スマホ画面では十分に美しく、サービスサイズのプリントなら満足できる画質です。
しかし、星が滲みのない点像で写るため、明るい星が目立たなくてスマホ画面では逆に見栄えのしない画像になってしまいました。スマホ画面で見るにしてもGoogle Pixelで撮影するには、デジカメのようにソフトフィルターが必要と思いました。
そこで、これまでデジカメ撮影で余っていたLee soft no.4 をスマホのレンズ前に貼ってみました。冬星座では星の色が目立って美しくなります。しかし、夏の天の川はソフト感が効きすぎて、ポテッとした感じになってしまいました。スマホ撮影でも、デジカメと同様に Lee soft no.1~2が適していることがわかりました。しかし、当時、Lee softフィルターは、すでに絶版。入手が難しくなっていました。そこで、いろいろ試したところ、セロファンテープが使えることがわかりました。そのまま貼るとLee Soft no,1 程度の効果になります。また、2枚重ねで貼るとno.3程の効果になりました。しかし、光量が減ってしまいます。少し指先で粘着部分を触ってから、貼り付けると、効果を大きくできることがわかりました。
Google Pixelでの撮影にはソフトフィルター必須(Google Pixel)
スマホから画像を直接SNSにアップ
せっかくスマホで撮ったので、そのままスマホで画像処理してSNSにアップしたいものです。これまで、容量が大きくなるRAWでの保存はしていませんでした。また、RAWで撮った際は、スマホで現像せずに、パソコンにデータを移動して現像をしていました。スマホ内でRAW現像するには、RAW現像ができる専用アプリが必要です。
スマホアプリのAdobe Lightroomを試したところ、パソコンで使用するAdobe Camera Rawと同じようにRAW現像できることがわかりました。私のサッと現像・ちょこっと調整では、十分な機能です。また、AdobeでCreative Cloudをサプスク利用しているので、スマホ版での拡張機能も使えて、普段のデジカメ撮影のRAW現像でも使えるほどです。
これまで地上部分はシルエットにするものと諦めていましたが、RAW現像により1枚撮りでも少しコントラストを落としたりシャドーを上げたりすることで地上部分を表現できるようになりました。
RAWで撮って現像したら地上風景もバッチリ見えてきた☆(Google Pixel)
スマホの可能性に挑戦中
デジカメ撮影の傍らではなく、今はメインでいろいろなスマホでの撮影に挑戦中です。手持ち撮影、照明を使わない星空ポートレート、流星群や彗星、花を近景にした花星景など。近頃は、タイムラプス動画づくりもはじめました。タイムラプス動画は、今後、SNSで公開していく予定です。
暗い空なら天の川もバッチリ・セロファンテープ2枚重ね(Google Pixel)
旅行中に出会った風景に、100均三脚の準備だけの1分で撮影開始(Google Pixel)
おわりに
近頃は、星空風景写真の撮影の敷居を下げる目的でスマホを使った星空撮影に取り組んでいます。また、近年は自分の勤める科学館やいろいろな場所でスマホでの星空撮影教室を実施させていただいています。そこでは、多くの人が自分のスマホを介した星空との一期一会に歓喜をあげて喜んでいます。こうして、実際に星空らの下で自ら撮ることで、より多くの方が美しい星空の保護に気持ちを向けてくれればと願っています。
-プロフィール-
著者:小林幹也(こばやしみきや)SNSではspitzchu☆
埼玉県在住 日本星景写真協会会員
Twitter: https://twitter.com/spitzchu
地元のプラネタリウムで星空解説や星空写真教室をしたり、TVや映画に星空動画を提供したりしています。近頃は、スマホで星空を撮影してTwitterにアップしています。