【シャッター押せばもれなく傑作】

<2025.10.30 最後の夜、やっと出会えた本格低緯度オーロラ>
ニュージーランド南島では、シャッター押せばもれなく傑作が撮れると断言しよう。
世界五大陸を回ってきたが、これほど美しい島はあるだろうかと思う。とくに氷河に削られた山々やあちこちで青緑色の水をたたえた湖には息をのむばかりだ。
景色は言うに及ばず、南半球の星空は北に住むわれわれのあこがれだ。みなみじゅうじやエータカリーナ、南天の天の川など想像するだけで胸がざわざわする。それに低緯度オーロラも見えるかもしれない!晴れさえすれば毎夜絶叫しつつあちらに三脚を立て、こちらでは別の角度から星景をねらう。考えただけで楽しすぎる!
ニュージーランドには2019年にASPJ準会員だった故菊地秀樹氏とはじめて出かけてから、2024年、2025年は一人旅をし、都合3回足を運んでいる。それほど気に入ったということだ。
今回のコラムでは、旅日記というより、同じようにニュージーランドに出かけたい星屋が多そうなので、ノウハウみたいなものを中心に書いていくことにする。
【思い立ったが吉日】

(2025.10.28月と天の川)トワイゼル
「無計画、無手勝流、なるようになれ、その代わり、何でも受けとめる」が身上の自分は旅行も出たところ勝負だ。言葉に不自由しないのが武器、英語さえ完璧ならなんとでもなる。他の言語も多少できればなおよし。
もちろん、英語ができなくてもなんとでもなるが、実は楽しみが3、4割ほど削がれているのだ。
10月の新月前後にニュージーランドに出かけたいという漠然とした思いだけがあったが、根が怠け者なので、なかなか動き出せない。10月に入ってやっと航空券をとったものの、どこに行きたいかいくつか候補があるけれど特に決められない。
低緯度オーロラが撮りたいから南にいい景色があり、かつ開けたところがいい。星空で有名なテカポは中国人がライトを照らしまくるし、星空ツアーのレーザーポインターが行き交うから近づきたくない。2019年で懲りている。

(2019.11.24テカポのランドマークGood Sheperd Churchにて)
2024年に立ち寄ったクイーンズタウンが特に気に入ったから今回はここを拠点としたい。これくらいしか決まっていなかった。
ああだこうだと考えている間に日は過ぎ、出発の前の週になってようやく現地到着から数日分の宿を取った。ああ、ホテル代が高い。でも、欧米と比べたらオセアニア通貨の対円レートは大きく変動していない。
【航空券の手配】
ニュージーランドに日本からの直行便はあるが、到着はオークランド。国際ターミナルから国内線ターミナルに移動しなければならない。1kmくらいあるかな?バスもあるし、歩くのもかまわないが、大荷物を持って移動したくない。スルーでチェックインするとロストバゲージの確率が上がる。エアニュージーランドは担当者によって対応が全部違ってうっとうしい。下手すると国内線だけ余分に荷物代をとられる。

(機窓から夜明け)
そんなわけで、2025年はシドニー経由にしてみた。実のところ、シドニーはロストバゲージの天国だからこちらこそ高リスク。少しでもリスクを回避するため、JALのJGCステータスをフルに活用。ステータスが高い方が荷物を大事にしてもらえる(たぶん…ほんまか?)。荷物もすぐに出てくる。
自分はこれまで奇跡的にロストバゲージの経験がたったの2回しかないが、その2回ともシドニー経由のときなのだ。これは大きな賭だと思った。念のため、最低の衣類と洗面具、カメラ機材だけ機内持ち込みにしたが、今回は幸い杞憂に終わった。

(機窓から南島の山々)
【スマホ】
ニュージーランドはWiFiが整備されているのでスマホはWiFiのあるところだけで使えばいいと考えて実行してもいいが、カーナビ用に電波も必要だし、思い立ったら調べ物もしたい。やはり移動中の通信は必要だ。AhamoやRakutenを契約していればそのまま海外でも通信できる。そうでなければ、日本でesimを申し込んでおくか、空港で物理simを買うか、現地に着いてからオンラインでesimを買うかだ。
今回はサブ回線としてRakutenを持っていたので、月2Gの通信は海外でもOKだった。2Gをオーバーしても通信速度がえらく遅くなるだけで通信できないわけではないが、ニュージーランドのesimはとても安いのでけちけちせずにオンラインで5G ほど購入すればいい。だいたいどこの通信会社でもたいした問題は起きないから適当に選んでいい。ahamoをわざわざ契約するよりもはるかに安い。
ただし、山の中では電波が途絶えがちなのは日本と同じ。今回のように広域停電が起きたら何をやってもアウト。
【お金】
現金は一切使うことがなかった。すべてクレジットカードで決済できた。停電の時も、クレジットカードの回線だけは確保されていた。ただし、日本と違ってカード手数料2~3%は使用者負担。Visa、Mastersが一般的。JCBも使えるところが多いが、AMEXは使えても手数料が高めとなる。
【国内移動】

(2024.10.17 レンタカーと虹)
移動手段は、車一択だ。拠点都市だけ観光するなら列車やバスという選択肢もあろうが、星景の撮影行なら車を借りなければ厳しい。
レンタカーはクレジットカードについているプライオリティーパスで予約した。
ニュージーランドは日本と同じ左側通行なので運転は楽だが、アメリカと違って、公的機関が発行する免許証の翻訳(つまり、「国際免許証」)が必要だ。(基本的にジュネーブ条約に加盟している国なら内容を現地の言葉で説明できれば取得国の免許証だけで運転できる。アメリカではレンタカー業者のwebページで自動翻訳してくれたりするし、ハワイでは日本語の免許証のままで問題なし。)
車種は、安くて人気のヒョンデを避けて、前回同様トヨタのRAV4にした。4WDだし、ACCも使えて、快適だ。ハイブリッドなのでガソリン代もあまりかからない。1週間で2000km運転するので快適さは大事だ。
カーナビはついているが、地図が期限切れだ!スマホと同期させてGoogleMapを使うのが一般的らしい。BlueToothでつなげるようになっているがどうにもつながらなかった(前回もそうだった)。データ通信のできるUSBケーブル(Cタイプ)がなければ文字通り路頭に迷うところだった。
移動中の一番の問題はトイレだが、幹線の町には必ず公共のトイレがあり、清潔なので、さほど心配しなくていい。

(トイレ。。星空のドアがすてき!)
南島では集落中心部以外はほとんどで制限速度が100km/hだ。こんな山のくねくね道を100km?と思うが現地の車はビュンビュン飛ばしてくるので、油断は大敵。自分の後ろに大名行列ができてしまったら、左に寄れる場所を探して先に行ってもらうのが吉。石がはねて車に当たることも多々あるので、予算が許すなら全責任免除の保険をつけることをおすすめする。(この辺り、英語ができないと交渉がつらいかも)
【宿】

(モーテル….窓の映り込みに注目!)
10月は春なのでさほど寒くもなく、車中泊してもいいし、数人集まればキャンピングカーなどもいいと思うが、一人だし、そこまでワイルドにできていないので、宿を取ることにした。日本と違って日帰り温泉がどこにでもあるわけでもないしね。宿は基本、モーテルが便利だ。玄関前に車を駐められたらなおよし。大きなスーツケースは車の中に置きっ放しにして、その夜に必要なものだけ宿に持ち込むスタイルを通した。
ニュージーランドのモーテルはなかなかよくできていて、だいたい食器や調理道具完備のキッチンがついているので自炊できる。どこでも必ずパックの牛乳がついてくるのが謎。車があるので多少町の中心からはずれた宿を取れば安く上がるし、部屋も広い。

(スーパー)
ニュージーランドはスーパーが充実しているのでフルーツやらチーズやらを買ってきて自炊するのが一番。気分によっては町に出てレストランでグルメを楽しむのもよし。
ほとんどの宿ではシャワーしかないが、清潔だし快適この上ない。(ジャグジーつきバスタブまであるモーテルが気に入って、ここは星空撮影のロケーションとしてもばつぐんなのでリピートしている)
一つだけ注意するとすれば、オーストラリアもニュージーランドもいわゆるオセアニア形のコンセントなので、必ずアダプタが必要だ。カメラやらスマホやらの充電が多数必要な現代人は100均でも販売しているので3つは持ち歩きたい。空港といえども、ユニバーサルなコンセントはまずない。
【クイーンズタウンが好き】
羽田からシドニー、乗り換えて、今回はクイーンズタウンに到着。なぜクイーンズタウンにしたかというと、ここが気に入ったからだという一言に尽きる。美しい山に囲まれた湖とイギリス風の街並み。どこを見ても美しい。町の中心から離れたら空も暗い。残念ながら旅の前半は異常気象による大雨、大洪水、あちこちで道路閉鎖に遭い、近辺のロケハンしかできなかったが、カメラを持って夜の町をうろうろするという新たな楽しみを開拓し、それに合わせて夜の町に特化した現像レタッチを工夫してみた。

(クイーンズタウン逍遙)
【ハプニング】
旅にハプニングはつきものだ。しかし、今回のハプニングは修行に近く、臨機応変の対応力が試されることになった。大洪水のため、クイーンズタウンの南西は広域停電になっていた。そういう情報は得ていたが、まさか、完全な停電でスマホの電波はもちろん、電話回線も不通になっていたとは予想外だった。
天候不良、大雨、大風ごときで、南島の南半分が機能不全になるとは!
次の目的地はミルフォードサウンドというフィヨルドの入り口の町テアナウだ。詳細な情報がないので、とりあえず車で出かけてみたが、クイーンズタウンを出ると携帯の電波がない。地図はあらかじめダウンロードしていたのでカーナビは機能したが、町に着いても、予約していたモーテルに着いてもオーナーと連絡がつかず、中には入れない。町の中心に出かけてあれこれ情報を仕入れたりしたが、手立てはなさそう。ミルフォードサウンドへの道も洪水で水没。こういうとき、正確な情報収集がすべてだ。
結局引き返すことにした。電力の復旧もめどが立たず、ミルフォードサウンドはあきらめることにした。
(この後、テアナウでの3泊を巡って金返せ、いや連絡がなかったから返さん、停電でどうやって連絡するんや、WiFiのパスワードを教えてあるから連絡できるやろ、停電でWiFi??と熾烈なバトルをメッセージ上で取り交わし、どうにもらちがあかないため、半ばあきらめて、GoogleMapに起きたことを書き連ね、悪い評価をつけたころ、返金を承知してきたという余談がある)
運転しながらあれこれ考えて、クイーンズタウンに戻るのも悔しいし、お天気も悪いからその先のクロムウエルにモーテルをとることにした。Windy先生によると、ここで一泊しながらこのさらに先のアレクサンドラまで行けばお天気がなんとかなりそうだということになり、アレクサンドラがどんなところかもよくわからないままアレクサンドラで宿を確保し、次の朝ドライブする。途中、絶景中の絶景に次々と出会った。
【やっと星空!そして、雪】
そして、ニュージーランドに来て5日目にしてはじめて三脚を出すことができた!

(2025.10.25 クロムウエル渓谷)
苦労の末星空に巡り会えて幸せな夜を過ごした後、お気に入りの湖に向かうことにしたが、またまた天候不良。10月なのに大雪で峠の道が閉鎖された。ニュージーランドの道路事情をFaceBookでフォローしていて、そこにも道路閉鎖の情報が出ている。春の雪だ。あきらめてGoogle先生の指示した30kmほど余計にかかる回り道に向かったが、途中で、Google先生が元の道に戻っていいという。どうやら道路閉鎖が解除されたらしい。Google先生の情報は実にタイムリーだと感心した。

(2025.10.28 雪のLindis Pass)
【絶景ポイントの探し方】
どんな絶景がいいかは好みによるだろうが、星景ねらいとしても、オーロラねらいとしても、南側が開けている水辺がおすすめだ。日本人にはあこがれの南の星座は当然南にある。そして、ニュージーランドの低緯度オーロラもみなみじゅうじの辺りを中心に出る。

(2024.10.12 星の映り込みは当たり前、コールサックまで映り込んでいる!淡いオーロラで宙が赤い)
当然のことながら星空の撮影は晴れてなんぼ。多少の雲は星景のアクセントになるけれど、ベタぐもりや雨ではどうにもならない。となると、雲の様子を見ながら移動することになる。そういう意味でも計画を決めて宿を固定してしまわない方がいい面もある。今回のように異常気象に振り回されると、晴れ間を探して移動せざるを得ず、地図と天気図をにらめっこしながら晴れそうでよさそうな景色を探すことになる。このため必要な情報はあれこれあるが、お天気はWindy先生、場所探しはGoogle先生で間に合った。加えるならば、ニュージーランドのオタゴ大学が出しているオーロラ予報もいいだろう。Facebookでフォローしておくといい。
さらに、現地の人から情報を引き出せたらなおいい。今回一番の収穫は宿の受付で教えてもらったワイナリーだった。
おいしいワインを買いたいけどどこかいいところない?と聞いてみたら、
スーパーに行ったら?といわれたので
それではロマンがない!とつっこんでみたら近くの丘の上にある絶景ワイナリーを教えてもらったのだ。
ブドウ畑や谷を見下ろす絶景を堪能し、ワインを買うときに撮影許可を得たので、日没後戻ってきてあれこれ星空の撮影をした。すると、すると!!!!

(2025.10.30 ブドウ畑と低緯度オーロラ)
みなみじゅうじの辺りがほんのり赤くなってきたではないか!オーロラだ!南島の南部は日本でいえば北海道の稚内くらいの緯度だし、オセアニアは磁気緯度が日本よりも高いから毎度オーロラを堪能している。ニュージーランド最終日にしてやっと本格オーロラに出会えた。
きゃ~~~!!! と闇の中で一人叫びつつ、あちこちでシャッターを押しまくり(トップ画像)。
また、すてきなロケーションを見つけても、夜になると追い出されるケースもあった。あきらめきれず、管理人と交渉して、撮影するだけなのでなんとかならないかと、以前撮った写真を見せたりして話が盛り上がり、許してもらえたこともあった。すごすごと撤退するのもいいが、ちょっと押してみると案外と理解してくれたりするのも楽しい。

(2019.11.30クライストチャーチ近くの教会)
天気に悩まされるのは旅のならいとなってしまったが、収穫は多々あった。ニュージーランドは治安もよく、物価も安定しているので、女性の一人旅でも問題がない。仲間と楽しく旅するのもいいだろう。景色の美しさ、星空の迫力は折り紙付きだ。1週間も休みを取れたらそれなりに楽しめるので、大いにおすすめする。自身にとってもさらなるリピート確定の地だ。次はルピナスの花が咲き誇る夏がいいかな?

(2019.11.28 ルピナスと三つ子の銀河)

プロフィール
著者:池田晶子(いけだ あきこ)東京都八王子市在住
日本星景写真協会準会員。
幼い頃から星が大好きで、長じてスペースフォーラムFSPACEに入会して一気に天文熱に火がつき、見るだけでは飽き足らなくなって、とうとう一眼レフを購入。星景写真にとどまらず、さまざまな情景に挑んでいる。作品のテーマは「時間」、撮影フィールドは「世界の果て」。星空のきれいなところならどこにでも出かけます。
以前に執筆したコラムと合わせてお読みいただければ幸甚です。
2023年4月号「雲のある星景」
2021年10月号 AWE・・「星景」を考える
2017年11月号「芸術は長し、命短し」
